海外特派員リポート

英国の新興デリバリー「最悪の株式公開」になった理由

横山三加子・毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)
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英国の街中を自転車で走るデリバルーの配達員=ロンドンで2021年4月1日、横山三加子撮影
英国の街中を自転車で走るデリバルーの配達員=ロンドンで2021年4月1日、横山三加子撮影

 「ロンドンで史上最悪の株式公開(IPO)だ」(英紙フィナンシャルタイムズ)

 3月31日、英国株式市場に衝撃が走った。この日、ロンドン証券取引所に英料理宅配サービス大手「デリバルー」が上場した。しかし、株価は公開価格を一時3割下回る厳しいスタートとなった。

 料理宅配は新型コロナウイルスの感染拡大で急拡大しているビジネスだが、なぜ市場の反応は芳しくなかったのか。背景にはいくつかの要因があった。

 英国はコロナ禍で飲食店の営業は持ち帰りのみとなっている。屋外席での営業再開は4月12日から、店内営業の再開は5月半ばからだ。街中では「ウーバーイーツ」などと並び、デリバルーの文字が入った特製のリュックを背負って、自転車やバイクで料理を配達する人が行き交う。

社会に不可欠のインフラ

 ロックダウン生活でもスマホで本格的な料理を頼めるのはありがたい。在宅勤務や学校の休校で家族の食事をつくる頻度が増えた人の負担軽減にもなる。飲食店も生き残るために宅配は必須だし、コロナで失業した人にとっては配達員という仕事が命綱になっているケースもある。

 昨年3月以来、店内飲食ができない期間が計8カ月になろうという英国では、もはや料理宅配サービスは社会に不可欠なインフラだ。

 デリバルーは2013年にロンドンで創業。最高経営責任者(CEO)のウィル・シュー氏が「ロンドンにはいいレストランがたくさんあるのに、宅配サービスが少ない」と嘆き、自身が配達員第一号となる形で事業を始めた。

 19年には米アマゾン・ドット・コムが出資し注目された。今では英国外を含め飲食店約14万店と提携し、配達員約11万人が登録している。コロナ禍の…

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横山三加子

毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)

1981年、埼玉県生まれ。法政大学社会学部卒。2004年、毎日新聞社に入社。岡山支局、大阪本社経済部を経て13年から東京本社経済部。電機・通信業界、経済産業省や財務省、財界などを担当。19年10月から現職。