高齢化時代の相続税対策

77歳元社長「仕事人生から自由時間へ」の小さな誤算

広田龍介・税理士
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 東京都内在住で中小企業のオーナー経営者だったTさん(77)は2年前、仕事からすっぱりと引退した。「人生100年時代」にあって70代はまだこれから。妻と夫婦水入らずで「第二の人生」の自由時間を楽しもうと考えていた。コロナ禍のなか思いもかけず長期入院を強いられるまでは。

75歳で完全リタイア

 Tさんは20代で家業を継ぎ、数年後には法人化して、事業を拡大させた。仕事に打ち込み、思い返せば、あっという間に過ぎた半世紀だった。

 5年ほど前から「やることは十分やった」と感じ、75歳を区切りに第二の人生に入りたいという思いを強めた。周囲に迷惑をかけないよう慎重に引き継ぎを行い、思い通り75歳で完全リタイアできた。

 一人娘は結婚して家庭を持ち、高校生と中学生の男の子2人の進学に気をもむ生活を送っているようだ。仕事から解放され、妻と2人でゆったり過ごす日々は、Tさんがまさに理想としていた過ごし方だった。

体力奪った長期入院

 Tさんは、現役時代から食事や体調管理に気を使ってきたが、70代に入り一度軽い心筋梗塞(こうそく)を起こしたことがあり、以来、定期検査を受けてきた。

 新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、その定期検査があり、軽い気持ちで病院に出かけた。少しせきが出ているのが気がかりだったが、驚いたことに、検査で肺に影が見つかり「新型コロナによる肺炎の疑い」という説明を受けた。PCR検査の結果は陰性だったが、肺炎の原因がわからないことから、念のために入院することになった。

 病室は病院内の隔離された場所にあり、医師や看護師も防護服で対応するものものしさだ。家族との面会は禁止され、会話といえ…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。