産業医の現場カルテ

「ミス増えた部下」真の理由を見過ごした課長の反省

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 安西さん(仮名、50代男性)は、従業員数約300人の研究開発企業で経理課長を務めています。経理課は安西さんを含め5人のメンバーがいます。産業医である私は先日、安西さんから「最近、メンバーのBさん(30代女性)にミスが目立っているのですが、どのように声をかければよいかわかりません」と相談を受けました。

ささいなミスが増えると……

 経理課は月末に向けて業務が忙しくなり、5人のメンバーは毎月おおむね40時間の残業をしています。

 Bさんは、約5年前にこの会社に転職してきました。当時、安西さんは、Bさんの業務処理が速くて丁寧なことに驚いたそうです。しかしここ数カ月、ささいなミスが増え、業務の期限が守れず、課全体に影響が出ることもありました。安西さんは何度か注意を促しましたが、Bさんは口数少なく「すみません」と応じるだけでした。

 以前は問題なくこなしていた業務でミスが多発するようになった場合、産業医としては、まず病気の可能性を疑います。本人はミスについて思い詰めたり、状況をよくしようともがいていたりする場合があります。安西さんには「Bさんの健康面が心配なので、病院の受診か産業医と面談をしたほうがいいのではないか」と勧めるようアドバイスしました。

2カ月程度の休職

 数日後、私はBさんと面談しました。B…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。