毎日家業×創業ラボ

脱「自社の論理」!東京・墨田発、町工場の挑戦

清水憲司・毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)
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東京・墨田の「オレンジトーキョー」が製造・販売するカラフルな布草履「MERI(メリ)」は、女優の石原さとみさんが出演する東京メトロのCMでも取り上げられた=東京メトロ提供
東京・墨田の「オレンジトーキョー」が製造・販売するカラフルな布草履「MERI(メリ)」は、女優の石原さとみさんが出演する東京メトロのCMでも取り上げられた=東京メトロ提供

 北欧風のカラフルな布草履「MERI(メリ)」を製造・販売する東京・墨田の「オレンジトーキョー」。創業者の小高集(つどい)さん(48)は、終戦間もなく創業した「小高莫大小工業」の後継ぎでしたが、父親との対立で会社を追われ、「ムリヤリ第二創業」の道を歩んできました。連載初回のテーマは、顧客ニーズに基づかず、自社の論理で製品を作ってしまう「プロダクトアウト」からの脱却。小高さんの苦闘を描きます。

私の家業ストーリー<1>小高集さん

 「莫大小」。これを何と読むか分かりますか?

 答えは「メリヤス」。では、メリヤスとは?

 ニット(編み物)の古くからの呼び名です。小高さんの自己紹介はこんなふうに始まる。

 ビジネススーツの生地のように伸縮しない織物に対し、セーターやトレーナー、ポロシャツ、肌着など伸び縮みするのが編み物。莫大(ばくだい)に伸縮するから、「莫大小」という漢字が当てられたという説がある。

 東京・墨田の両国地区は、江戸時代からメリヤス産地として知られてきた。西欧から輸入された靴下が始まりとされ、下級武士の内職として定着。明治以降は、隅田川をはさんだ馬喰町かいわいに洋服の卸問屋街が集積し、両国にはメリヤス職人が集まった。

 かつては肌着が中心だったが、戦後の高度成長を経て服装の西洋化が進み、次第にアウター(外着)にも使われるようになって需要が急増。「ポロシャツは片方の袖がなくても売れた」。小高さんは父親から、そう聞いたのを覚えている。それほどメリヤス業界は繁盛していた。

傾く経営「八…

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清水憲司

毎日新聞経済部副部長(前ワシントン特派員)

 1975年、宮城県生まれ。高校時代まで長野県で過ごし、東京大学文学部を卒業後、99年毎日新聞社に入社。前橋支局を経て、東京経済部で流通・商社、金融庁、財務省、日銀、エネルギー・東京電力などを担当した。2014~18年には北米総局(ワシントン)で、米国経済や企業動向のほか、通商問題などオバマ、トランプ両政権の経済政策を取材した。