日本人が知らない中国ビジネス最前線 フォロー

「監視カメラで追跡」中国人が悩む個人情報漏洩

趙瑋琳・伊藤忠総研主任研究員
多くのアプリを使う中国では個人情報の漏えいが社会問題になりつつあるという
多くのアプリを使う中国では個人情報の漏えいが社会問題になりつつあるという

 無料通信アプリ「LINE(ライン)」のユーザー情報が、中国のライン孫会社からアクセス可能な状態になっていた問題が物議を醸している。中国に目を向けると、ここ数年、多種多様なアプリを使う多くの中国人ユーザーが個人情報の漏えいに悩まされ、社会問題になりつつある。

 3月15日、その象徴的な出来事があった。同日は「世界消費者権利デー」で、中国国営放送の「中央電視台(テレビ)」が毎年「問題企業」をあぶりだす「315晩会」という名のドキュメンタリー番組を放送する。今年は初めて個人情報の不正取得と転売に焦点を当てた。

 これまで同番組は中国で販売する工業製品の品質あるいはアフターサービスをめぐり、消費者の権利を侵害する疑いのある企業を批判してきた。3月15日から数日間はマスコミが後追い報道をするため、連日ニュースの“主役”ともなる。

 中国の有名企業はもちろん、外資系企業も取り上げられるため、この時期になると、企業はみな戦々恐々としているという。実際、過去にはフォルクスワーゲン、アップル、ナイキ、無印良品など名高い企業の製品やサービスがやり玉に挙げられた。

監視カメラで行動追跡も

 しかし、今年は従来のスタイルから一変し、ネット上の個人情報の取り扱い問題がクローズアップされた。

 中国の企業が店内に設置した監視カメラを使って、消費者の顔データを収集し、顔認識システムでその人の行動を追跡する事例や、大手…

この記事は有料記事です。

残り532文字(全文1130文字)

伊藤忠総研主任研究員

 趙瑋琳(ちょう・いーりん)。1979年、中国瀋陽市生まれ。2002年に来日。08年東工大院社会理工学研究科修了、博士号取得。早大商学学術院総合研究所、富士通総研を経て19年9月から現職。専門は中国経済、デジタルイノベーションと社会・経済への影響など。プラットフォーマーやテックベンチャーなど先端企業に詳しい。早大商学部非常勤講師も務め、論文執筆・講演多数。近著に「チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃」(東洋経済新報社)。