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ハリス副大統領の手腕が試される「二つの危機対応」

古本陽荘・毎日新聞北米総局長
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自身の立ち位置を示せるか=Bloomberg
自身の立ち位置を示せるか=Bloomberg

 米国の副大統領の役割は必ずしも明確ではない。広く知られているように、大統領が辞職したり、死亡したりした場合、副大統領が大統領に昇格する。ケネディ元大統領のように実際に暗殺された大統領もいるため、「いざという時に備える」のが副大統領の役割であるのは間違いない。ただ、それ以外にも政治的に重要な役割を果たしてきた。

 トランプ政権(共和党)のペンス副大統領は、キリスト教右派など共和党の伝統的な支持層を固める役割を担った。オバマ政権(民主党)で副大統領だったバイデン大統領はもっぱら議会対応を任された。37年間の上院議員経験があり、与野党の議員に顔が利いたからだ。ブッシュ(息子)政権(共和党)のチェイニー副大統領は、自らの外交・安全保障の別働チームを持ち、対外政策で大きな影響力を持った。

ハリス副大統領の役割は

 昨年の米大統領選でバイデン氏と副大統領候補だったカマラ・ハリス氏は、二人三脚の色合いが濃かった。ハリス氏は黒人女性で、バイデン氏よりふた回りほど若い。バイデン氏が、若い世代の有権者や黒人支持層にアピールするにはハリス氏の存在は欠かせなかった。こうした「選挙の顔」としてのハリス氏の役回りは明白だった。

 だが、選挙が終わり、いざ就任しても副大統領としての役割はこれまで明確ではなかった。ところが突然、二つの危機対応の矢面に立つことになった。

 一つは、メキシコとの国境に押し寄せる移民の問題だ。「国境の壁」建設を進めたトランプ政権から、バイデン政権に移行したことで、米国への入国規制が緩和されるのではないかと期待する中南米の若者が国境に押し寄せ、政権の喫緊の課題となっている。

 バイデン氏は…

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古本陽荘

毎日新聞北米総局長

1969年生まれ。上智大文学部英文科卒、米カンザス大大学院政治学修士課程修了。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)。