経済記者「一線リポート」

「カードが出ない」ATM障害遭遇した記者が問う、みずほの過ち

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記者からの質問を受けるみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長=東京都千代田区で2021年4月5日午後6時49分、西夏生撮影
記者からの質問を受けるみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長=東京都千代田区で2021年4月5日午後6時49分、西夏生撮影

 「一体なにが起きたんだ?」――。その時の心境は、ひたすら混乱、当惑だった。みずほ銀行のATM(現金自動受払機)で2月28日に起きたシステム障害。記者(37)は、休日にお金を引き出そうとして、キャッシュカードをATMに吸い込まれる被害に遭った。多くの預金者がATMの前で立ち往生していたあの時、みずほでは何が起こっていたのか。くしくも4月から銀行担当になった記者が、自身の体験も交えて検証した。【毎日新聞経済部・竹地広憲】

「何だこれ?」

 体験談を記す前に、まず自分とみずほ銀行の関係を記しておこう。川崎市出身の記者は、親がみずほの口座を使っていたこともあって学生時代に口座を開設し、就職後もそのまま給与の振込口座にしてきた。クレジットカードの引き落としなどにも利用する、いわばメイン口座だ。最近では普段の買い物は電子マネー決済が中心だが、それでも月1~2回ほどはATMに立ち寄り、現金を引き出している。ごく普通の預金者の一人である。

 当時政治部に所属し、コロナウイルス対応の取材に追われてきた記者にとって、障害のあった2月28日は貴重な休日だった。昼過ぎに近所の飲食店でテークアウトの昼食を買って家に帰る途中、近くの商業ビルのATMコーナーに立ち寄った。すると4台並ぶうちの2台で、男女がそれぞれ電話をしているように見えた。今思えばかなり違和感のある光景だが、それを横目に空いたATMの前に立ち、カードを挿入。普段通りの画面から入力作業を進めると、突然画面が「お取り扱いできなくなりました」と切り替わった。

 「何だこれ?」。驚いて周囲を見回すと、隣の男女からも「やっぱりおかしいですよね」と話しかけられ、何か異様なトラブルが起きていることに気づいた。スマホでツイッターなどの情報を調べると「カードが出てこない」といった情報が次々と流れ始めていた。

 この時一体何が起きていたのか。実はみずほはこの日の午前8時24分から、1年以上通帳に記帳されていない預金口座のデータを「デジタル口座」に移行する作業などを行っていた。しかし、データ処理の量が事前の想定を上回った結果、システム上のエラーが発生。ATMのデータ処理にまで不具合が及んでしまった。

 もともとみずほのATMは、エラー発生時にカードを取り込む設定になっており、午前中から各地のATMで取り込みが発生し始めていた。最初の異常の感知(午前9時51分)からその根本原因を突き止めるまでにみずほが要した時間は、なんと約7時間。結果的に利用者は、ほとんど情報のないままATMの前で放置される事態に陥った。

「電話がつながらない!」

 そんな事情も知らない記者。ATMの画面には「備え付けの電話で問い合わせを」とのメッセージが表示されている。しかし、4台の電話のうち、作動しているのは1台しかなかった。その1台は最初に被害に遭った女性客が使っていたが、音声案内で保留にされたまま、まったくオペレーターにつながらないという。2番目に取り込まれた男性客は、近所の支店などに電話を試みているようだが、つながらず困惑している様子だ。

 この場を立ち去った後、突然ATMからカードやお金が吐き出されたら……と思うと、正確な対処法がわかるまで勝手に帰るわけにもいかない。備え付けの電話をかけられる順番も当分先だ。「長丁場になりそうだ」と覚悟を決めた。記者は…

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