経済プレミア・トピックス

「なぜ私は原発運転を差し止めたのか」元裁判長が語る

川口雅浩・毎日新聞経済プレミア編集長
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オンラインで講演する元福井地裁裁判長の樋口英明さん
オンラインで講演する元福井地裁裁判長の樋口英明さん

元裁判長が語る原発の不都合な真実(1)

 「私は2014年5月、関西電力大飯原発の運転差し止めの判決を出しました。多分みなさんが思っているより、裁判所というのは健全な組織なんです」

 こう語るのは福井地裁裁判長として、関電に大飯原発3、4号機の運転差し止め判決を出した元裁判官の樋口英明さん(68)だ。樋口さんは4月14日、オンラインの講演会で国会議員や学者らに原発や裁判の知られざる内幕を語った。

 東京電力福島第1原発の事故から10年。日本のエネルギー政策を考えるうえで、樋口さんの指摘は示唆に富み、参加した国会議員らからは「そんな事実は知らなかった」など、驚きの声が上がった。

原発の耐震性に注目

 樋口さんは京都大法学部卒業後、裁判官となり、14年5月の関電大飯原発の判決のほか、15年4月には関電高浜原発3、4号機をめぐり、再稼働差し止めの仮処分決定を出した。

 東電福島第1原発の事故以降、原発運転の差し止めは大飯原発が初めてだった。しかも地震大国の日本で、原発の耐震性を理由に判決を出したことから、大きな反響を呼んだ。

 その後、17年に名古屋家裁部総括判事で定年退官。21年3月に「私が原発を止めた理由」(旬報社)を出版、現在は全国で講演活動を続けている。今回は金子勝・慶応大名誉教授が代表世話人を務める有識者グループ「ヨナオシフォーラム」で講演した。

 樋口さんの語りはゆっくりで淡々としながらも、元裁判官らしく理路整然としている。難解な専門用語は使わず、わかりやすい言葉で語り掛ける。

「負けるとわかっていた」理由とは

 「被告の関西電力は、そもそも判決の法廷に出席しなかったんですよ。こういう大きな事件だと出席するのが普通なんだけど、出席しなかった。その理由は…

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川口雅浩

毎日新聞経済プレミア編集長

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部