海外特派員リポート

米投資会社アルケゴスは市場の「大量破壊兵器」?

中井正裕・北米総局特派員(ワシントン)
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大手金融機関に巨額の損失が発生し、米金融市場は衝撃を受けた
大手金融機関に巨額の損失が発生し、米金融市場は衝撃を受けた

 ニューヨーク金融市場で3月下旬、投資会社「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」がリスクの高い金融取引に失敗し、アルケゴスと取引のあった野村ホールディングス(HD)やクレディ・スイスなど大手金融機関が巨額の損失を被った。

 金融機関の損失は合計で100億ドル(約1.1兆円)に上るとの試算もある。2008年のリーマン・ショックを教訓に金融監督・規制が強化されたにもかかわらず、なぜこのような事態が起きてしまったのだろうか。

巨額資金を運用するファミリーオフィス

 アルケゴスは韓国系米国人の投資家ビル・フアン氏が家族の資産を運用・管理する「ファミリーオフィス」と呼ばれる投資会社だ。フアン氏は01年から投資会社「タイガー・アジア・マネジメント」を運営していたが、中国株を巡るインサイダー取引で米国と香港の規制当局から摘発され、同ファンドは12年に閉鎖。その後、アルケゴスを立ち上げた。

 アルケゴスの運用資産は約100億ドルとされるが、運用規模は500億ドル規模に膨らんでいたという。投資家が株式を直接保有せず、金融機関を通じて運用資金(証拠金)の何倍もの株式を運用する「トータル・リターン・スワップ」と呼ばれるデリバティブ(金融派生商品)取引を積極的に手掛けていたためだ。

 この取引は、金融機関も手数料収入が入るうまみのあるビジネスで、ロイター通信によると、野村HDは16年ごろフアン氏との取引を再開し、米国事業でアルケゴスとの取引は収益のトップ10に入るほど急拡大していたという。

アルケゴスの運用実態を誰も知らなかった

 事態が急転したのは3月24日だ。アルケゴスは米メディア大手バイアコムCBSや…

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中井正裕

北米総局特派員(ワシントン)

1975年京都府生まれ。立命館大学法学部卒。2000年毎日新聞入社。岐阜支局、中部報道センターを経て、09年から経済部で電力改革、貿易交渉、日銀などを取材。政治部にも在籍し、首相官邸、自民党などを担当した。18年10月から現職。