ニッポン金融ウラの裏

証券業界に高度成長期から続く「はめ込み営業」の矛盾

浪川攻・金融ジャーナリスト
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東京証券取引所がある日本取引所グループのビル=2020年2月、松岡大地撮影
東京証券取引所がある日本取引所グループのビル=2020年2月、松岡大地撮影

 銀行・証券の業務を隔てる規制措置、いわゆる「ファイアウオール」の在り方を巡る議論が金融庁の審議会で再開された。銀行の優越的地位の乱用、それに起因する利益相反の防止が論点であり、規制撤廃を求める銀行業界と維持を主張する証券業界の対立が浮き彫りになっている。

 そうしたなか、資本市場における「もう一つの利益相反」も議論する必要があるとの声が出始めた。証券業務で情報の隔壁を設ける規制にはファイアウオールのほかに「チャイニーズウオール」と呼ばれるものがある。

 チャイニーズウオールは、企業の増資、株式上場などを担う引き受け部門と、個人投資家などに株式の銘柄をアドバイスして販売する営業部門を隔てる規制だ。主に引き受け部門が入手する非上場企業の情報を、営業部門が販売に不正活用する「インサイダー取引」を防ぐために規定されている。

証券会社の“伝統的な営業手法”

 その一方で、わが国では企業の株式上場などの際、主幹事証券が引き受けた「割り当て玉」と呼ばれる新規公開株式を営業部門が主に個人投資家に積極的に販売して上場を成功させる方式が伝統的に行われている。

 海外では、新規公開株式の消化先は投資のプロである機関投資家だ。機関投資家は、売り出し価格など発行条件が適正か否かを見極めて、投資の可否を判断できる。

 個人投資家に販売活動を行うわが国独特の仕組みは、高度成長期に突入する前に生まれた。企業部門の著しい資本不足を迅速かつ効果的に解消するために、全国の家計部門の余裕資金を活用する必要性があったからだ。

 高度成長を実現させる発射台として、家計、すなわち個人投資家のマネーを新規上場や増資によって発行される…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。