産業医の現場カルテ

テレワークで音信不通に「部下の異変」を見逃した上司

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 A太さん(25)は、従業員数約300人のあるメーカーの研究開発部門に勤める、入社3年目の社員です。3カ月ほど前に受診した精神科で「適応障害」と診断されて休職していました。この会社の産業医である私は、A太さんが復職する前に面談をしました。A太さん自身は順調に回復しましたが、会社側は今回の対応から反省点が浮かび上がりました。

急に「今日は休みます」

 会社は、この1年でテレワーク(在宅勤務)ができる部門には積極的に導入を促し、A太さんは1人暮らしの住まいでほぼテレワークをしていました。私は、A太さんが休職を始めたタイミングで、上司である研究開発部門の責任者と人事担当者から報告を受けました。経緯は次の通りでした。

 A太さんは、休職する1カ月ほど前から週に1~2日、始業前に急に「今日は休みます」とメールで連絡してくるようになりました。上司は当初、「テレワークの環境に慣れず少し疲れがたまっているのだろう」と考えていました。

 しかし、あるときから連絡がなくなりました。会社の業務管理システムでも、A太さんが自宅に持ち込んでいた社有パソコンの稼働状況を確認できなくなりました。上司はその状況になって、慌ててA太さんに電話をしましたがつながらず、人事担当者に相談しました。

「適応障害」と診断

 人事担当者はA太…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。