
コロナ禍で、いわゆるデジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX)はさらに加速、拡大している。我が国では政府も企業もDX祭りと言うか、デジタル、デジタルと大騒ぎである。
しかし、そこから実際に出てくるのは、ハンコを無くすとか、クラウドサービスを使って経理を自動化するとか、デジタル技術を使って業務改善を行う話がほとんど。少し前まではIT化という文脈で語られていた話と大差ない。
結論をズバリ言おう。そのレベルのDXはやらないよりやった方がいいが、それで日本が30年にわたる長期停滞から抜け出すことは困難。経営におけるデジタル化の真の衝撃とは、それが産業構造そのもの、事業モデルそのものを非連続に変え、既存の産業やビジネスに破壊的な打撃を与えうる点にある。産業変容、すなわちインダストリアル・トランスフォーメーション(IX)を起こすことにこそ、DXの重大性があるのだ。
デジタル革命と「空中戦力」の登場
DXがもたらすIXの実相は、その産業領域の上部にサイバー空間という付加価値レイヤー(階層)が生まれ、それが上空を覆うと、下にいる事業や産業は、サイバー空間において「空中戦力」を駆使する企業に壊滅的に破壊される、あるいは低収益の下請け的な位置づけにされるという革命性にある。
かつてのコンピューター産業において、IBMに代表されるコンピューターメーカーが、それまではむしろ下請けレイヤーにいたソフトウエア会社のマイクロソフトやマイクロプロセッサーメーカーのインテルに圧倒されていった歴史が本格的なデジタル革命の幕開けである。
その後、インターネットとモバイルの時代がやってきて、…
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