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元裁判長が語る「原発訴訟」の赤裸々な内幕とは

川口雅浩・毎日新聞経済プレミア編集長
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原発について全国で講演する樋口英明さん=京都府与謝野町で2019年10月5日、塩田敏夫撮影
原発について全国で講演する樋口英明さん=京都府与謝野町で2019年10月5日、塩田敏夫撮影

元裁判長が語る原発の不都合な真実(4)

 東京電力福島第1原発の事故以降、全国で原発の運転差し止めを求める訴訟や仮処分申請が相次いでいる。

 関西電力大飯原発3、4号機をめぐる2014年5月の福井地裁判決以降、日本原子力発電東海第2原発をめぐる21年3月の水戸地裁判決まで、運転を差し止める7件の司法判断が出たが、これまでのところ上級審などで覆るケースが多い。

 なぜなのか。福井地裁で裁判長として14年5月の運転差し止め判決を出した元裁判官の樋口英明さん(68)はオンラインの講演会で、原発訴訟をめぐる司法界の内幕を赤裸々に語った。それはショッキングな内容だった。

「裁判官は大事なこと知らない」

 「700ガル(震度6弱相当、ガルは地震の強さを加速度で示す単位)の地震が来れば、原発は危うくなりますが、裁判官の多くは700ガル以上の地震が過去に何回起きたか、700ガルが震度6なのか7なのか、大事なことを知りません」

 なぜ多くの裁判官は知らないのか。「それは裁判官も弁護士も前例に従い、『原子力規制委員会の新規制基準に合致しているか』などに関心を払い、実際に起きている地震に比べて原発の耐震性が高いのか低いのかに関心がないからです。これが裁判の実態なのです」という。

 樋口さんが裁判長として出した大飯原発の運転差し止め判決は、名古屋高裁金沢支部が18年7月に取り消し、住民側が逆転敗訴となった。これについては、どう思っているのか。

 「金沢支部は、住民側が強い耐震性を求めて原発を拒否するのは政策論なので、裁判所は判断できないと判決に書きました。妙な理屈をつけ、政策論と法律論をごっちゃにしているので…

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川口雅浩

毎日新聞経済プレミア編集長

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部