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「全員参加型DX」ワークマン・エクセル経営の学び

入山章栄・早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
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入山章栄・早大大学院教授=東京都新宿区で西夏生撮影
入山章栄・早大大学院教授=東京都新宿区で西夏生撮影

 入山章栄・早稲田大大学院教授の連載「未来を拓(ひら)く経営理論」は、世界の経営学の知見をビジネスパーソンが実践できる形で分かりやすく紹介していきます。今回のテーマは、ワークマンが全員参加で進める「エクセル経営」です。企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で大事なことを、ワークマンを事例に考えます。

入山章栄教授の「未来を拓く経営理論」

 前回は、ワークマンがひたすら顧客の声をきく「ユーザー・ドリブン・マーケティング」を成功させ、躍進してきた背景には、現場への権限委譲、社内コミュニケーション、情報共有の促進があると論じました。

 では、ワークマン躍進のキーマン、土屋哲雄専務はどのようにして、この組織文化を作ってきたのでしょうか。私は、その一つが、現場の力をさらに引き出す仕組みとして進めた全員参加型のデータ活用経営「エクセル経営」だと考えています。

 ワークマンの「エクセル経営」とは、どのようなものなのか、ご説明しましょう。土屋さんは著書「ワークマン式『しない経営』」(ダイヤモンド社刊)の中で、こう書いています。「普通の会社でエクセルというと、おもに経営計画などで予算と売り上げの集計に使用され、多少バカにされている印象があるかもしれない」。しかし、土屋さんは続けて、エクセルこそ「奥の深い『草の根分析ツール』である」と位置づけます。

「あえてエクセル」デジタルをみんなのものに

 先端的なプログラム言語や人工知能(AI)は、コンピューターサイエンティストなど、社員の一部しか扱えないものです。他方で、エクセルは少し学べば多くの社員が使えます。だからこそ、社員参加型のデータ活用経営ができるのです。優秀なリーダーが会社を引っ張るのではなく、「普通の経営者を普通の社員が支えな…

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入山章栄

早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

 1972年生まれ。慶応大学経済学部卒業。米ピッツバーグ大経営大学院から博士号を取得。2013年に早稲田大大学院准教授。19年から現職。世界の経営学の知見を企業経営者やビジネスパーソンが実践できる形でわかりやすく紹介している。主な著書に「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)など。