藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

米シアトル「スタバとアマゾン」新産業を生む町の秘密

藻谷浩介・地域エコノミスト
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北から見たシアトル都心。正面にスペースニードル。右はピュージェット湾(写真は筆者撮影)
北から見たシアトル都心。正面にスペースニードル。右はピュージェット湾(写真は筆者撮影)

米ダウンタウン編(9)

 ボーイング、スターバックスコーヒー、マイクロソフト、コストコ、アマゾン。創業順に並べたが、いずれもシアトルから発祥した世界企業だ。札幌と同じく19世紀末に始まり、人口規模も同等のこの町が、続々と新産業を生む秘密は?

恵まれた気候

 米国本土の太平洋岸で一番北にある港町シアトルは、南北に細長い地峡の上にある。西は太平洋から深く入り込んだピュージェット湾で、東は細い水路で海とつながるワシントン湖だ。地盤は砂州ではなく、氷河期末期に削られて残った岩盤で、東西断面はかまぼこ形に起伏している。マンハッタン島と似た構造だが、傾斜はもっときつい。

 シアトルは、筆者が米国で訪問した最初の都会だ。1978年、中学2年の夏に3時間ほど離れた田舎町にホームステイした際に、ドライブで連れて行ってもらった。92年の夏には、3カ月間住んだこともあるが、実に美しい町だった。

 寒流の流れる太平洋からは寒い偏西風が吹くが、湾の西にそびえるオリンピック山脈を越える際にフェーン現象が起きるため、冬でも氷点下になることは少ない。夏も酷暑にならず爽やかで、通年適度の降水がある。東には標高3000~4000メートルのカスケード山脈が南北に連なり、晴れると雪を抱く主峰のレーニア山が、町の南東のかなたに見える。

 カスケード山脈のさらに東側には大河コロンビア川があり、ニューディール時に設けられたダムから、安価な電力が供給される。そのため当地の住宅は古くからオール電化だ。世界最大の林業会社ウェアーハウザーの所在地でもあり、住居は木造が標準で、最近は集成材を使った高層の木造アパートも増えている。

観光…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。