職場のストレス・マネジメント術

新人教育を任せた入社3年目が「心の休養」必要なワケ

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
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 岡田さん(仮名、20代前半男性)は、化学品メーカーのマーケティング部(約10人)に所属する入社3年目の社員です。同部は、顧客や商品の分析など地道で根気のいる仕事が多く、コツコツ積み上げていく努力家タイプの岡田さんは性に合っていたそうです。

 仕事ぶりが評価された岡田さんは、部長(40代後半女性)から、新入社員のAさん(20代前半男性)の教育担当を打診されました。部長からは「新人教育を担当することで自分に自信を持ち、積極的に部を引っ張っていく人材になってほしい」とも言われました。

「人前で恥をかきたくない」

 岡田さんは、ルーティンの仕事は丁寧にこなしますが、何か新しい仕事に取り組むことや人づきあいが苦手です。仕事で新規の案件を受け持つことは非常に不安を覚えますし、会議や懇親会なども異様なまでに緊張します。普段から、できるだけ新規案件の担当になることを避け、会議では自分が発言する場面を極力減らし、懇親会など人と話をする会合は可能な限り避けていました。

 このような行動は、批判や屈辱を受けるリスクを伴う状況や交流を回避する「回避性パーソナリティー障害」の傾向をもつ人に見られます。回避性パーソナリティー障害の人は「人前で恥をかきたくない」という気持ちが極端に強く、その根底には、自分に対する強い「不全感」(自分は不完全で何も満足にできないという感情)があると言われています。

 この傾向が強すぎると、他者からの批判や拒絶を恐れるあまり社会参加が困難になり、対人緊張症や引きこもりなどになることもあります。しかし同時に、自分を否定せずほめてくれるような相手であれば、親密な関係を結びたいという気持…

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舟木彩乃

産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。金融庁職員のメンタルヘルス対策にも従事する。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。