藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

米西海岸ポートランド「地元愛」で成功した町づくり

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ポートランド・ダウンタウンの最大の特徴は荒廃地区に再生された住宅街の美しさだ(写真は筆者撮影)
ポートランド・ダウンタウンの最大の特徴は荒廃地区に再生された住宅街の美しさだ(写真は筆者撮影)

米ダウンタウン編(10)

 米国西海岸では最も地味なオレゴン州の、中心都市がポートランドだ。世界を席巻するGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を生んだ、北カリフォルニアおよびシアトルの中間に位置するが、大きな企業はほとんどない。にもかかわらず世界の都市開発や地域づくり関係者の間に、確固たるブランドを打ち立てている。そんな街のダウンタウンは、他都市とどこが違うのか?

コイントスで勝って付いた名前

 米国には、ポートランドを名乗る有名都市が二つある。最北東部メーン州の最大都市(都市圏人口30万人程度)と、今回紹介するオレゴン州の最大都市(都市圏人口250万人程度)だ。前者出身の開拓者が1843年、別の名前を付けたいライバルにコイントスで勝ち、故郷と同じ名前をこの地に付けたのだ。だが今では、オレゴン州ポートランドの方が世界的に有名になっている。

 2015年4月。筆者は日本各地のまちづくり有志の視察に同行し、ポートランドに6度目の訪問をした。ポートランド国際空港には日本から直行便が飛んでいた時期もあるが、今回はシアトルから1時間ほどの小型機でのフライトだった。

 空港から市内へは、15分おきのLRT(次世代型路面電車)で40分だ。MAX(Metropolitan Area Express)と呼ばれるこのシステムは、東西南北の郊外から都心を経由して他方の郊外へ抜ける5路線を持ち、延長96キロに達する。都心は路面を低速運行するが、郊外では高速道路沿いの専用軌道を車に負けないスピードで走り、多くの駅に、乗り換え客用の無料立体駐車場が整備されている。料金は、バスや、都心だけ…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。