毎日家業×創業ラボ

「伊豆で輝く大企業人材」東急・毎日プロジェクト

永井大介・毎日みらい創造ラボ・アクセラレーター
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伊豆半島・下田市の風景
伊豆半島・下田市の風景

 東京の大手企業人材と静岡・伊豆半島の企業経営者を結びつけ、伊豆の企業の課題解決や新規事業につなげる「伊豆の経営者×大企業副業人材マッチングプロジェクト」のキックオフセミナーが4月30日に静岡県伊東市の観光会館別館で開かれました。経営課題を解決したい伊豆の経営者、これまで培ったスキルを別の場所で生かしたい大企業人材ら約200人が参加したセミナーについて報告します。

「学び場」家業×創業ラボ・セミナー報告

 セミナーは、創業の時代から伊豆の発展に力を注いできた東急と、毎日新聞社のベンチャー支援組織である「毎日みらい創造ラボ」が企画。東京で緊急事態宣言が発令されていることを受けて、東京からの参加者はオンラインでの参加とし、コロナ対策も行った上でのイベント開催となった。

 セミナーには、日本を代表する広報PRの専門家、本田哲也氏が登壇し「中小企業こそナラティブ(物語)が必要」と題した基調講演を行った。

 本田氏によれば、これまで企業は自らの商品・サービスを「自分目線」で情報発信するケースが多かった。これに対し、近年、重要度を増しているのは、商品・サービスにまつわるナラティブ。企業からの一方向の情報発信ではなく、消費者や従業員、取引先、株主など、あらゆる関係者を巻き込みながら、物語を紡ぎ上げていくことを意味するのだという。

セミナーで講演する本田哲也氏=静岡県伊東市で2021年4月30日
セミナーで講演する本田哲也氏=静岡県伊東市で2021年4月30日

本田哲也氏「中小企業こそナラティブを」

 どういうことか。本田氏が取り上げたのは、味の素冷凍食品の事例だ。「冷凍食品は手抜きだ」と夫に言われたことを嘆いたツイートに端を発し、同社は「冷凍食品は手抜きではなく、手間抜き」とするナラティブを生み出した。

 味の素冷凍食品は、同社の工場にカメラを入れて、冷凍食品を作る140を超える工程を動画投稿サイトで見せることで、いかに手間をかけて冷凍食品を作っているかを発信して、多くの共感を集めた。同社のツイートは40万もの「いいね」がついた。

 「いかに冷凍ギョーザがおいしいか」ではなく、「冷凍食品が手抜きではなく、工場で手間と愛情をこめて作られており、それを活用することは生活を豊かにする選択である」というメッセージを伝えることを目的として動画を制作したという。

 本田氏は「企業が消費者を巻き込んで、同じ体験を共有することが大切だ」と指摘。そのうえで「言っていることと、やっていることに裏表がなく、自分らしさを大事にする企業であれば、予算が少なくてもナラティブを作ることができる。今後はこうした企業こそが大切にされる」と強調し、「ぜひ伊豆からも『ナラティブカンパニー』の事例を作り出してほしい」と呼びかけた。

「求む! 伴走してくれる人材」伊豆の経営者

 基調講演に続き、本田氏と大企業人材3人、伊豆の企業経営者2人と自治体関係者の計7人が、「伊豆の企業経営者は大企業人材に何を求めているのか」と題したパネルディスカッションを行った。

伊豆の企業経営者と大手企業の人材によるパネルディスカッション=静岡県伊東市で2021年4月30日
伊豆の企業経営者と大手企業の人材によるパネルディスカッション=静岡県伊東市で2021年4月30日

 伊豆の企業経営者からは「伊豆の多くの企業では、これまでのビジネスモデルが賞味期限を迎えている」と報告し、「今ある技術を生かしつつ、新たな分野に進出する必要があるが、我々には新規事業を立ち上げるノウハウがない。新規事業を進めていく能力と、我々と伴走してくれる気持ちを持った人材に来てほしい」と要望した。

 一方、大企業人材は「上司から与えられたノルマを達成するだけでなく、社会課題を自分で見つけてプロジェクト化し、自分の力で進めていけるような人材が求められるようになった。しかし、大企業にそうしたチャレンジができる場がたくさんあるわけではない」と、大企業内部でのミスマッチの存在を指摘した。

 その上で「資金はあるけれど、チャレンジする人材がいないという課題を抱えている地域企業が多い。そのことが伊豆に来て分かった。大企業はどんどんチャレンジしたい人材を地域に解放していくべきだ」との意見が出た。

       ◇       ◇       ◇       

 東急と毎日みらい創造ラボによるプロジェクトは今後、大企業人材と伊豆の企業経営者のマッチング合宿など、伊豆地域の活性化に取り組んでいきます。第1回目の合宿は6月23~25日の開催を予定しています。

【パネルディスカッション参加者】

本田哲也氏(本田事務所代表)

<伊豆>

高木康行氏(伊東市、石舟庵社長)

廣瀬拓人氏(下田市、栄協社長)

森田七徳氏(東伊豆町企画調整課課長)

<大企業人材>

神田主税氏(三菱地所)

深田昌則氏(パナソニック・ゲームチェンジャーカタパルト代表)

松木健治氏(東急)

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永井大介

毎日みらい創造ラボ・アクセラレーター

 1975年神奈川県生まれ。住友銀行(現三井住友銀行)を経て2000年、毎日新聞社に入社。山形支局、東京社会部を経て、東京経済部で中央官庁や日銀、自動車、鉄道などを担当した。17年からベンチャー支援を行い、30社以上の立ち上げに関わったほか、毎日新聞社の新規事業創出も担っている。NEDO高度専門支援人材フェロー。実家は神奈川県厚木市の測量会社。