高齢化時代の相続税対策

「呼び寄せ近居」離れて暮らす81歳母が納得するまで

広田龍介・税理士
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 K子さん(81)は3年前から自宅で一人で生活している。長男(56)、長女(54)はともに実家から離れたところで暮らしているが、K子さんの様子が気がかりだ。

「老老介護」の後で

 K子さんは、高齢の母を引き取って、夫と3人で暮らしていたが、その後、夫が亡くなり、母も3年前にこの世を去った。母の晩年は「老老介護」の日々だったが、その母が亡くなってしまえば、K子さんには話をする相手もいなくなってしまった。

 以前はスーパーに買い物に出かけることが好きだったが、外出することもめっきり減った。家に一日中こもり、誰とも顔を合わさなかったという日も珍しくない。

 長男と長女はそんなK子さんの様子を気にしている。

 K子さんが一人暮らしになった当初、長男は「自分の家の近くにある高齢者施設に入居しないか」と誘ってみた。だが、K子さんは「住み慣れた家を離れ、見知らぬ土地に行くのは嫌だ」と頑として受け付けなかった。

月に1度の実家通い

 そこで、長男と長女は毎日のようにK子さんに電話を掛け、月に1度は実家を訪ねるようにしてきた。近所や民生委員には見守りをお願いし、食事は宅配サービスの手配をした。

 だが、次第に、K子さんの様子がおかしいと思うようなケースが増えてきた。

 ある時、K子さんが電話で「テレビが映らなくなった」というので、実家に行くと、コンセントから電源プラグが抜いてあっただけだった。実家に電話を掛けてもつながらないため、近所の人に見に行ってもらうと、電話線のコードが抜かれていたということもあった。

 少し前には、夜中に玄関のドアが開きっぱなしになっているので、近所の人が不審に思って尋ねてみると、単…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。