
ソフトバンクG最高益となったワケ(1)
孫正義会長兼社長が登壇するソフトバンクグループ(SBG)の決算発表は、孫氏の巧みな話術とともに、毎回スクリーンに登場するインパクトのあるビジュアル(映像)が楽しみだ。
戦国時代の武田氏の騎馬軍と織田信長の鉄砲隊が戦う映画の1シーンや、金の卵を産むガチョウの絵などがこれまでの決算発表で登場した。2021年5月12日に発表した21年3月期の連結決算は、セピア色の踏切の写真だった。
「豆腐屋のように数えたい」
「この1枚の写真を見ていただきたい。ソフトバンクは1981年、福岡のこの小さな町で創業した。この踏切を何度も渡った。この踏切の先には博多駅、東京駅があり、夢がある。いつか夢を実現させると心に誓った」
孫氏は静かにこう切り出した。さらに「この町で初めて雇った2人の社員に『いつか必ず、売り上げも利益も1兆(丁)、2兆(丁)と豆腐屋のように数えられる会社にしてみせる』と言ったら、1週間後には両方ともやめてしまった」と、40年前の昔話を披露した。
「無理もない」と孫氏は言った。「この写真の景色にある小さな会社の社長が1兆円、2兆円などと言ったら、何言ってんだ、この男はおかしいんじゃないかというのが普通の感覚だろう」と語った。
株高で好転、トヨタ抜く
創業時代の孫氏のこのエピソードは有名だ。今回、孫氏がそんな昔話を持ち出したのは、SBGの最終利益が…
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川口雅浩
経済プレミア編集部
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。