海外特派員リポート

上海モーターショー「陰の主役」は米中対立のあの企業

小倉祥徳・毎日新聞中国総局(北京)特派員
  • 文字
  • 印刷
中国の上海モーターショーで、女性オーナーの抗議が起きる前の米テスラのブース=上海市内で2021年4月19日、小倉祥徳撮影
中国の上海モーターショーで、女性オーナーの抗議が起きる前の米テスラのブース=上海市内で2021年4月19日、小倉祥徳撮影

 中国で開かれた世界最大規模の自動車見本市「上海モーターショー」の「陰の主役」は、米中対立だったのかもしれない。

 4月19~28日の会期中、日米欧や中国メーカーが電気自動車(EV)の最新モデルを中心に128車を世界で初公開したが、現地で多くの話題をさらったのは、米EV大手テスラと、自動車メーカーではない中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)だったからだ。「陰の主役」とは、どういうことなのか。現地を取材して考えた。

テスラオーナーの女性が突然…

 「テスラの騒動を目撃したか?」

 上海でモーターショーの取材を終えて北京に戻った筆者は、周囲の中国人から相次いでこう尋ねられた。“騒動”に対する中国人の関心の高さは、私の予想以上だった。

 騒動とは、河南省で今年2月にテスラ車で衝突事故に遭ったという女性オーナーが開幕初日の4月19日、同社ブースの展示車によじ登り「テスラはブレーキが利かない」などと抗議した一件だ。

 テスラを巡る騒動はその後も一向に収束せず、インターネットやSNSを通じて中国の一般市民の強い関心を集めている。

 女性が抗議した後、中国のテスラ幹部は、事故後に女性と協議を続けたが合意に至らなかったことを明らかにした。その上で「妥協するつもりはない」と地元メディアに発言。すると今度は国営新華社通信や中国共産党などが「傲慢だ」と批判し、同社は翌20日に謝罪に追い込まれた。

 その後も中国の規制当局が「品質に責任を果たすべきだ」との声明を出し、事故の調査を指示した。5月に入り、女性がテスラ幹部を名誉毀損(きそん)で提訴したと報道されるなど、この問題は今なお注目を浴び続けている。

「…

この記事は有料記事です。

残り895文字(全文1591文字)

小倉祥徳

毎日新聞中国総局(北京)特派員

東京都生まれ。2001年入社。秋田支局を経て06年から東京経済部で財務省、内閣府、経済産業省、国土交通省、日銀、証券、エネルギー業界などを担当。17~19年には中部本社でトヨタ自動車などを取材した。東京経済部、外信部を経て20年10月から経済担当の中国総局(北京)特派員。