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「かさばって邪魔」老眼鏡を革新したアトツギの知恵

入山章栄・早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
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極薄・軽量の老眼鏡「ペーパーグラス」=西村プレシジョン提供
極薄・軽量の老眼鏡「ペーパーグラス」=西村プレシジョン提供

 入山章栄・早稲田大大学院教授の連載「未来を拓(ひら)く経営理論」は、世界の経営学の知見をビジネスパーソンが実践できる形で分かりやすく紹介していきます。今回取り上げるのは、薄さ2ミリという極薄の老眼鏡「ペーパーグラス」をヒットさせた福井・鯖江の西村プレシジョン。会社が長年培ってきた技術を、どうすれば市場のニーズを捉えた新製品開発につなげられるか。成功の裏には「遠く」の世界から舞い戻った後継ぎの存在がありました。

入山章栄教授の「未来を拓く経営理論」

 福井・鯖江は、世界的な眼鏡フレームの産地として知られてきました。しかし、ここ20年ほどは、安価な中国製の流入に押され、事業所数、従業員数とも大きく減少しています。西村金属(西村プレシジョンの母体となる関係会社)も当時は、典型的な下請け企業で、厳しい状況に立たされていました。

 そうした中、2003年、苦しい実家の経営を手伝うため、東京のIT系ベンチャー企業に勤めていた西村昭宏さんが、鯖江に戻ってきます。

 その10年後に「ペーパーグラス」を発売して大ブレークを果たすわけですが、その前に日本の老眼鏡市場について、少し考えてみたいと思います。

 老眼鏡には、ユーザーから見て大きな課題があります。お分かりでしょうか。それは「老眼鏡は、いつもかけているわけではない」という点です。実はこれが重要なポイントです。

持ち歩きに不便……

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入山章栄

早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

 1972年生まれ。慶応大学経済学部卒業。米ピッツバーグ大経営大学院から博士号を取得。2013年に早稲田大大学院准教授。19年から現職。世界の経営学の知見を企業経営者やビジネスパーソンが実践できる形でわかりやすく紹介している。主な著書に「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)など。