米国社会のリアル

米ワクチン接種「廃棄18万本」を忘れさせるスピード感

樋口博子・ロス在住コラムニスト
  • 文字
  • 印刷
米国では新型コロナウイルスのワクチン接種の対象年齢が「12~15歳」に拡大されている=米カリフォルニア州で2021年5月13日、AP
米国では新型コロナウイルスのワクチン接種の対象年齢が「12~15歳」に拡大されている=米カリフォルニア州で2021年5月13日、AP

 「ここまで来るのに我々は58万を超える人命を失いました。今日もまだ新型コロナウイルスによって命が失われています。でもやっと、米国にこの日が来たのです」

 5月13日、CNNテレビのキャスターが伝える感慨深げなコメントを聞いて、私にも同様の思いが込み上げてきました。

 テレビから流れてきたのは、政府の米疾病対策センター(CDC)がコロナ対策のガイドラインを緩和したというニュース。CDCはこの日、「ワクチン接種完了者は屋内外でマスクを着用する義務はなく、人と人との距離をとる必要もない」と発表したのです。

 「コロナが制御下に入りつつある」という宣言とも受け止められ、国民にとっては夜明けが見えてきたことを告げるものでした。

 もちろん実際の規制は州や郡といったレベルで行うものであり、カリフォルニアのように「マスク着用義務」を続ける州もあります。何より、米国ではいまも1日当たりの新規感染者が2万7000人を超えています(5月19日時点)。「変異株」の脅威も消えたわけではありません。

 それでも政府が全国レベルで「脱マスク」に向けた明確なメッセージを示し、長い暗闇の中にいる国民に希望を与えたところに、私は米国らしさを感じます。

急拡大したワクチン接種

 ワクチンの普及に伴い、感染者や死亡者が著しく減少していることは事実です。バイデン政権が発足した今年1月20日の時点では、1日当たりの新規感染者は19万人、死者は3000人を超えていました。

 世界最多の死者、感染者を出し、「コロナ対策の劣等生」などと言われていた米国ですが、昨年12月に始まったワクチン接種がこの数カ月で急拡大し、現在は成人の60%が…

この記事は有料記事です。

残り1732文字(全文2430文字)

樋口博子

ロス在住コラムニスト

 兵庫県生まれ。ロンドン大修士(開発学)、東大博士(国際貢献)。専攻は「人間の安全保障」。2008年、結婚を期にロサンゼルスに移住。渡米前はシンクタンク、国際協力銀行、外務省、国際NGOで開発途上国支援に取り組んだ。米国で2019年に独立。地元コミュニティーを地域や日米でつなぐ活動をしている。カリフォルニア州議会下院議員アル・ムラツチ氏(民主党)は夫。