
「ここまで来るのに我々は58万を超える人命を失いました。今日もまだ新型コロナウイルスによって命が失われています。でもやっと、米国にこの日が来たのです」
5月13日、CNNテレビのキャスターが伝える感慨深げなコメントを聞いて、私にも同様の思いが込み上げてきました。
テレビから流れてきたのは、政府の米疾病対策センター(CDC)がコロナ対策のガイドラインを緩和したというニュース。CDCはこの日、「ワクチン接種完了者は屋内外でマスクを着用する義務はなく、人と人との距離をとる必要もない」と発表したのです。
「コロナが制御下に入りつつある」という宣言とも受け止められ、国民にとっては夜明けが見えてきたことを告げるものでした。
もちろん実際の規制は州や郡といったレベルで行うものであり、カリフォルニアのように「マスク着用義務」を続ける州もあります。何より、米国ではいまも1日当たりの新規感染者が2万7000人を超えています(5月19日時点)。「変異株」の脅威も消えたわけではありません。
それでも政府が全国レベルで「脱マスク」に向けた明確なメッセージを示し、長い暗闇の中にいる国民に希望を与えたところに、私は米国らしさを感じます。
急拡大したワクチン接種
ワクチンの普及に伴い、感染者や死亡者が著しく減少していることは事実です。バイデン政権が発足した今年1月20日の時点では、1日当たりの新規感染者は19万人、死者は3000人を超えていました。
世界最多の死者、感染者を出し、「コロナ対策の劣等生」などと言われていた米国ですが、昨年12月に始まったワクチン接種がこの数カ月で急拡大し、現在は成人の60%が…
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