
公的年金の被保険者(加入者)に交付する年金手帳が来年度に廃止される。年金記録の証明書として大切に保管するよう求められ「将来年金を受け取るための重要書類」と考える人は多いだろう。だが、その本来の役割はかなり以前から次第に薄れていた。なぜだろうか。年金手帳の役割を公的年金制度の経緯とともに振り返ってみよう。
「基礎年金番号」までの道のり
年金手帳は手のひらサイズの小冊子で、国民年金や厚生年金の被保険者であることを証明する。1974~96年に発行されたものは表紙がオレンジ色、97年からは青色だ。表紙の色で世代がわかり、目安として60代後半から40代半ばはオレンジ色、青色はそれより若い世代となる。
日本の公的年金は61年に国民皆年金になり、勤め人が加入する厚生年金に加え、自営業者らが加入する国民年金ができた。しかし、制度は別で、加入記録もそれぞれ独立した番号体系で管理していた。
当時は、国民年金は表紙が茶色の年金手帳、厚生年金は別の証明書で加入記録を管理していたが、転離職などで加入制度が変わると管理も複雑になった。
そこで74年に国民年金と厚生年金の被保険者証明書を共通化し、オレンジ色の年金手帳として統一した。手帳には、国民年金と厚生年金それぞれの番号の記載欄があり、加入制度が変わっても1冊で管理できる狙いだった。
しかし、転職のたびに新しい番号を付与したりして、同じ人が同一制度で複数の番号を持ってしまうこともあった。
86年にはバラバラの年金制度を一体化し、国民共通の国民年金(基礎年金)を1階部分、厚生年金は上乗せの2階部分とする基礎年金制度ができた。さらに、97年には年金記録を…
この記事は有料記事です。
残り1577文字(全文2275文字)