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すぐに怒りだす社員と「素行障害」の行動パターン

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
 
 

 中村さん(仮名、30代前半女性)は法律事務所で事務職員として働いています。事務所にいるのは弁護士や弁理士など10人で、穏やかな雰囲気で居心地の良い職場でした。しかし、3カ月ほど前に一般事務の契約社員としてAさん(20代前半男性)が来てから職場の環境が一変しました。中村さんはストレスを抱えることが多くなり、職場に来るのが憂鬱になりました。

 Aさんは、所長の旧来の知人で重要な取引先の社長の息子です。社長から、高校卒業後、進学も就職もせず遊んでいる息子を「そちらで面倒をみてくれないか」と相談された所長は、まずは契約社員として事務所で働いてもらうことにしたそうです。

 事務所で電話対応や入力などの一般事務を引き受けているのは中村さんだったため、Aさんの教育担当は必然的に彼女になりました。

あいさつも仕事もできない

 所長は、Aさんが取引先の社長の息子であることや初めての職場であること、特別扱いする必要はないが温かく迎え入れてほしいことなどを職員に伝えました。特に中村さんには「よろしく頼みます」と頭を下げてお願いしたそうです。

 Aさんは、あいさつや言葉づかいなど社会人としての基本的なことができません。マナー研修に参加させてみましたが、効果はありませんでした。パソコンの作業を依頼しても、気が向くと入力などをしていましたが、飽きると堂々とゲームをしている状態です。

 中村さんは何度も注意をしましたが、舌打ちしたり、父親の力を背景に「あなたをクビにだってできるんですよ」と言って中村さんを脅したりすることもありました。無断欠勤や遅刻も多く、理由を聞くと「親戚のお葬式に行っていた」などと、後でうそと…

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産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。金融庁職員のメンタルヘルス対策にも従事する。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。