日本企業に未来はあるか

「他社がまねする商品作れ」シャープの哲学生きてるか

中村吉明・専修大学経済学部教授
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記者会見するシャープの野村勝明副社長(当時、現社長)=東京都港区で2019年11月1日、鈴木健太撮影
記者会見するシャープの野村勝明副社長(当時、現社長)=東京都港区で2019年11月1日、鈴木健太撮影

 シャープの創業者・早川徳次氏(1893~1980年)は「他社がまねするような商品を作れ」という、一風変わった言葉を残している。どういうことなのか。

 「他社がまねするような商品」とは、消費者が望む良い商品で、売れる商品ということだ。早川氏は「まねが競争を生み、技術の底上げをし、やがては社会の発展につながる」とも言っている。

 その言葉通り、シャープは早川氏のシャープペンシルの発明・生産に始まり、国産初の量産ラジオとテレビ、電子式卓上計算機など、我々が普段使う数多くの製品を生み出してきた。近年は液晶テレビで一世を風靡(ふうび)したものの、過剰投資と国際競争の激化で台湾の鴻海精密工業に買収され、現在に至っている。

 果たして現在のシャープには、創始者が残した経営哲学が生きているのだろうか。

ユニークな調理家電

 シャープといえば液晶テレビの「アクオス」を連想するが、実は白物家電にも競争力がある。

 例えば、加熱した水蒸気で調理するオーブンの先鞭(せんべん)をつけた「ヘルシオ」、食品に含まれる水分を活用して調理する「水なし自動調理鍋」の「ヘルシオホットクック」など、多くのユニークな調理家電を世に出している。

 そのシャープ、先日発表した2021年3月期連結決算の実績では、営業利益が前期比61%増の831億円となり、好調だ。その理由の一つとして、巣ごもり需要による家電の売り上げアップが挙げられる。ただ、その家電の好調は持続しない可能性が高い。

 というのは、同じ機能の家電を一家で複数台所有する事例はめったになく、買い替え需要は約10年に1度だからだ。日本電機工業会は21年度の白物家電出荷額が1.8%減少すると…

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中村吉明

専修大学経済学部教授

 1962年生まれ。87年、通商産業省(現経済産業省)入省。環境指導室長、立地環境整備課長などを経て、2017年から現職。専門は産業論、産業政策論。主な著書に「AIが変えるクルマの未来」(NTT出版)、「これから5年の競争地図」(東洋経済新報社)など。