海外特派員リポート

「英国の電話ボックス」図書館やカフェに変身の理由

横山三加子・毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)
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約390万円で落札されたロンドン中心部の電話ボックス=英国ロンドンで2021年5月31日、横山三加子撮影
約390万円で落札されたロンドン中心部の電話ボックス=英国ロンドンで2021年5月31日、横山三加子撮影

 総務省の有識者会議が4月、NTT東日本と西日本に設置が義務付けられている公衆電話(現在10.9万台)を4分の1まで減らすことを容認する報告書をまとめた。携帯電話の普及による利用減を受けての判断だ。

 赤い電話ボックスが街の象徴になっている英国も状況は同じで、電話ボックスで電話をしている人を見たことはない。日本と違うのは、長年親しまれてきた電話ボックスの新たな活用が進んでいることだ。

 ロンドン南部ののどかな住宅街。幹線道路沿いにたつ赤い電話ボックスの戸を開けると棚が設けられ、150冊を超える本が並んでいる。地元の非営利団体が数年前から運営する24時間営業の「ミニ図書館」だ。

 散歩途中の地元の住民、ロニー・トロートンさん(55)は「気に入った本があれば借りている。携帯電話を持つようになって電話ボックスは誰も使わなくなったけれど、地域にとって、とても特別な場所になっている」と話す。この日は、ドイツの小説家トーマス・マンの本を1冊手に電話ボックスを後にした。

図書館やアートギャラリーに“変身”

 これは、電話ボックスを設置する英通信大手BTが、希望する自治体や地域団体などに1ポンド(155円)で電話ボックスの利用権を与える取り組みの一環だ。対象は自治体や地域コミュニティーなど公共性の高い企業・団体に限られるが、わずか1ポンドで長期間借りられる。

 取り組みは2008年に始まり、これまでに英国全土で6600台の電話ボックスが図書館やアートギャラリー、自動体外式除細動器(AED)置き場などとして生まれ変わっている。

 電話ボックス内の電気代はBTが負担するなど、利用しやすさにも力を入れる。今年…

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横山三加子

毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)

1981年、埼玉県生まれ。法政大学社会学部卒。2004年、毎日新聞社に入社。岡山支局、大阪本社経済部を経て13年から東京本社経済部。電機・通信業界、経済産業省や財務省、財界などを担当。19年10月から現職。