高齢化時代の相続税対策

相続した借金を「自宅売却で返済」78歳の終の住み家は

広田龍介・税理士
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 裕福な医師の家庭に育ったK子さん(78)は4人きょうだいの三女で、下に弟がいる。他のきょうだい3人は皆、医師となり、独立して医院を経営している。K子さんだけは医師とは無縁で、結婚相手となった夫(77)も普通のサラリーマンだった。

きょうだい4人で「ひとり相続放棄」

 父はかなり前に亡くなったが、当時、税務署が公示していた「長者番付(高額納税者公示)」では常連組だっただけに、優良不動産など相続財産はかなりのものだった。

 母は敷地530平方メートルの自宅の土地・建物と最寄り駅近くにある商業ビル1棟を引き継ぎ、他のきょうだい3人は残りの不動産を相続した。

 だが、K子さんだけは相続放棄した。K子さん夫婦は以前から、K子さんの実家で親と同居していた。父が亡くなった後も母と暮らすことになるため「独立している他のきょうだいとは事情が違う」というのが理由だった。夫もサラリーマンとはいえ高収入で、生活は十分ゆとりがあり、父の財産を相続する必要も感じなかった。

 実は、それがK子さんの苦労の始まりだった。

 母が相続した商業ビルはバブル期に建てたもので、建設費が高額となったため、多額の銀行融資を受けており、金利も8%と高かった。しかし、バブル崩壊後は、テナント料が下がり、借入金の返済計画が厳しくなっていた。

 K子さんは行きがかり上、母の賃貸経営と借入金返済を支援することになった。10年前には、自宅敷地のうちの200平方メートルを切り離して賃貸アパートを建て、賃貸収入を借金返済に充ててきた。

母の「隠し借金」の衝撃

 その母が数年前に亡くなった。母の相続財産を洗い出すなかで、驚くべきことが判明した。母…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。