毎日家業×創業ラボ

「僕はレアキャラになる」尾鷲の街づくり仕掛け人の志

道永竜命・毎日新聞中部報道センター記者
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三重・尾鷲の街づくり仕掛け人、伊東将志さん=三重県尾鷲市で、道永竜命撮影
三重・尾鷲の街づくり仕掛け人、伊東将志さん=三重県尾鷲市で、道永竜命撮影

 熊野灘に面した三重・尾鷲。黒潮がもたらす豊かな海の幸と、温暖多雨な気候で育つ「尾鷲ヒノキ」が名産です。人口1万7000人のどこにでもあるような田舎町ですが、ここにあるランチバイキングとお風呂をメインにした観光施設「夢古道おわせ」には毎年人口の10倍以上の人たちが訪れます。仕掛け人は、街づくりに欠かせないと言われる「よそ者」でも「若者」でもなく、生まれも育ちも尾鷲の伊東将志さん(47)。「レアキャラになって、この町をなんとかする」――。17歳のときに抱いた夢に向かって走り続ける伊東さんの奮闘を報告します。【道永竜命/中部報道センター】

私の家業×創業ストーリー・伊東将志さん<1>

 三重県南部にある林業と漁業で栄えてきた尾鷲市。伊東さんはこの町で生まれ、この町で育った「井の中の蛙(かわず)」だ。

 父方の祖父は岩手・宮古の出身だったが、そのほかの親類はみんな尾鷲生まれの尾鷲育ち。多くの田舎町と同様、「女の子と歩いていたら『あんた誰々と歩いてたでしょ』ってすぐ見つかるような大分面倒な感じ」だが、その分、人との距離が近かった。

 競りが終わった昼下がりの魚市場で、仲間と野球をやったり、空き地を走り回ったり。切り立った山と海を眺めて、いつも日焼けしているような子ども時代を過ごした。

 最初の転機は高校時代。周りの友達が普通科や進学を目指すクラスに進む中、商業科に進んだ。「なんだかよく分からないけど、行く人が少ないってことで選んだ」という。

 入学してすぐ簿記3級に合格したが、その後は「鳴かず飛ばず」。テストの答案用紙いっぱいに答えを書き込んだが、100点満点でわずか2点という成績のこともあったらしい。

 その頃、赤灯台が見える岸壁に仲間とよく集まっていた。海を見ながら、なんとなく将来のことを話した。仲間たちは進路を決め始めていたのに、自分は決めきれなかった。「何が自分らしいのか。何をすれば自分らしさが出せるのか」と悩んだ。

 とはいえ、「やりたいこと」は何も思い浮かばなかった。「ただ何かで身を立てる、『何者かになる』ことを考えて…

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道永竜命

毎日新聞中部報道センター記者

 1979年北海道生まれ。明治大学卒。北海道の地方紙記者を経て、2012年毎日新聞社に入社。中部報道センターを振り出しに岐阜支局、大垣通信部を経て、再び中部報道センター。19年5月から東京本社経済部で、電機メーカーなどの製造業を中心に取材。20年4月からはコロナ禍で進む企業のデジタル化などを取材しながら、IT企業を担当した。21年4月から3度目の中部報道センター。