熊野英生の「けいざい新発見」

東京五輪は無観客でも「経済損失」にならない理由

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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東京オリンピックのメイン会場となる国立競技場=2021年6月3日、大西岳彦撮影
東京オリンピックのメイン会場となる国立競技場=2021年6月3日、大西岳彦撮影

 7月23日から8月8日まで東京オリンピックが開催される予定である。現時点で五輪の中止あるいは無観客での開催を望む声は大きい。しかし筆者は、観客を入れて開催するのがいいが、最悪の場合は無観客の開催であってもよいと考えている。

 なぜ、五輪を開催すべきかといえば、理由は国民に勇気を与えると考えるからだ。後々、競技者の活躍は多くの人々の記憶に深く刻まれると思う。もちろん、感染防止策はきちんと行うべきであり、私は五輪関係者に対して、その点で一定の信頼を置いている。

チケット代が払い戻されても

 最近、日本の男子、女子のゴルフ選手が米国のメジャー大会で優勝・準優勝する姿を見て感動を覚えた人も多いと思う。おそらく、東京五輪でも同様に新しいヒーロー・ヒロインが数多く生まれるだろう。

 日本人のメダリストは、2012年のロンドン大会で38種目、16年のリオデジャネイロ大会で41種目で誕生した。彼らは、五輪が終わっても注目の人であり続け、その種目の宣伝や地元の人材育成に貢献する。それは大きな経済効果を生んできた。

 最近の報道で、東京五輪を無観客で行うと「経済損失」が生じるというものを見ることがあるが、これには少し驚いてしまう。

 日本人向けのチケット代の総額は900億円で、仮に無観客ならば、チケット代の全額払い戻しによって900億円の損失となり、さらに464万人程度の観客が東京などで支出する消費もなくなる--という見方である。しかし、900億円はチケット購入者に戻ってくるので、追加的な経済損失ではない。払い戻された中から追加的な消費に回るものもあるはずだ。

 また、チケットを購入した464万人(キャン…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。