産業医の現場カルテ

「狭心症で救急搬送」復職する50代営業職の不安と対策

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
  • 文字
  • 印刷
 
 

 久保さん(仮名、50代男性)は精密機器メーカーの営業職ですが、ここ1カ月休職していました。産業医である私は、久保さんと復職に向けた面談をしました。休職のきっかけは狭心症でした。復職後すぐにもとの業務をするのは難しい状況で、どういった対応をするか職場と調整するための面談でした。

現役世代で発症することも

 久保さんは1カ月ほど前、仕事中に胸に強い痛みを感じて意識を失い、救急車で病院に搬送されました。冠動脈が細くなり血流が悪くなる狭心症と診断され、2週間ほど入院しました。

 発症前は大きな商談がまとまった時期で、その前数カ月は月60~70時間の残業が続いていました。疲れたときや階段を上がった後に軽い胸の痛みがあることを実感していましたが、病院を受診する時間がなかったそうです。また、喫煙の習慣がありました。

 狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患の患者は、高齢男性に多い傾向がありますが、現役世代の人も発症するケースがあります。死に直結する病気というイメージを持つ人が少なくありませんが、適切な治療を受ければ通常の生活ができるケースが多く、心疾患で退職する人の割合は1割以下という会社が約85%という調査結果もあります(労働政策研究・研修機構「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査」)。

 久保さんは入院中に、手首などから細い管(カテーテル)を入れて、金属製で網目状の筒のようなステントで…

この記事は有料記事です。

残り1041文字(全文1639文字)

佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。