経済記者「一線リポート」

実はコロナ前から急伸 任天堂スイッチ長寿命の秘密

井口彩・大阪本社経済部記者
  • 文字
  • 印刷
ニンテンドースイッチ=任天堂提供
ニンテンドースイッチ=任天堂提供

 任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」の人気が止まらない。発売5年目でも店頭で品切れが相次ぎ、ネットでは定価を上回る価格で販売されている。コロナ禍で巣ごもり需要の追い風を受けたことが大きいが、業界を分析して20年の専門家は「実はコロナ前からスイッチの売り上げは急伸していた」と指摘。2019年から想定外の売れ行きを示し、従来の据え置き型ゲーム機が超えられなかった「限界普及率」を上回る見通しという。一体どういうことなのか。そしてこの勢いはいつまで続くのか。【毎日新聞大阪経済部・井口彩】

 「ここも売り切れか……」。5月初め、記者はパソコンの画面とにらめっこをしていた。4月から京都市に本社を置く任天堂などのゲームメーカーも担当になり、「まずは自分で試してみよう」とスイッチの購入を決意したからだ。しかし近くの家電量販店は品切れ状態で、通販サイトでも売り切れや入荷待ちが続出。「在庫あり」とするなじみのないサイトもあったが、希望小売価格(3万2978円)を5000円以上超えている。スイッチのソフトが一つ買えるほど価格がつり上げられているなんて……。ネットを騒がせる「転売ヤー」の存在を感じさせられた。

発売5年目でも品薄

 「高値で買ったら負けた気分」。もやもやした気持ちを抱えつつ、その後も通販サイトなどをチェックし、ついに購入できたのは6月13日。別の用事で訪れた大阪市内の量販店のおもちゃ売り場に入荷されているのを見つけ、すぐさまレジに向かった。ついに念願のスイッチを手にしたうれしさをかみしめるとともに、「まだこんなに売れているなんて」と驚かされた。スイッチが発売されたのは17年3月。発売から5年目に突入する中での品薄だったからだ。

 任天堂によると、スイッチの世界販売は21年3月までの累計で8459万台。20年度だけで2883万台を売り上げ、前年度を780万台上回った。同社は「継続して生産出荷しているが、高い需要によって一部の地域で品薄が発生している」と説明。「半導体部品の供給が逼迫(ひっぱく)し、例年より(生産の)不透明感は増している」とした。

19年秋から販売台数が急伸

 巣ごもり需要で活況を呈するゲーム業界。「実は、スイッチはコロナ前の19年秋から売り上げを伸ばしていたんです。私もびっくりしたんですが」。こう語るのは20年にわたりゲーム業界の分析を担当してきたエース経済研究所の安田秀樹シニアアナリストだ。スイッチは「過去のゲーム機とは違う動き」を見せたという。どういうことなのだろう?

 安田さんによると、ゲーム機の販売動向の特徴は、プレースタイルの違いから二つに分かれるという。ゲーム情報メディア「ファミ通」によるデータを見てみよう。

この記事は有料記事です。

残り3192文字(全文4321文字)

井口彩

大阪本社経済部記者

 2017年毎日新聞社入社。新潟支局を経て2021年4月から大阪本社経済部。埼玉県出身。