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家業あるある「後継者が取引先で修業」がNGなワケ

入山章栄・早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
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早稲田大大学院の入山章栄教授=東京都新宿区の早稲田大学早稲田キャンパスで、丸山博撮影
早稲田大大学院の入山章栄教授=東京都新宿区の早稲田大学早稲田キャンパスで、丸山博撮影

 入山章栄・早稲田大大学院教授の連載「未来を拓(ひら)く経営理論」は、世界の経営学の知見をビジネスパーソンが実践できる形で分かりやすく紹介していきます。今回から4回にわけて、中小企業や家業経営者の「やってはいけない」を論じていきます。最初のテーマは「後継者を取引先に修業に出してはいけない」です。

入山章栄教授の「未来を拓く経営理論」

 ファミリービジネスには、いわゆる「下請け」的な仕事をしているところも多く、自分の息子さんや娘さんをメインの取引先企業などに修業として送り込む経営者がおられます。しかし、そのパターンで事業承継をしたときに大きな成功を収めたケースは必ずしも多くない印象です。むしろ、大きな成功を収めるのは、「取引先と関係ないところ」で経験を積んだ息子さんや娘さんが後を継いだ場合です。

 すなわち、遠くに修業に行った後継者が新しい視点を持ち込むことで、会社がもともと持っていた技術との新たな組み合わせが起き、イノベーションが生まれるケースが多いのです。極薄の老眼鏡「ペーパーグラス」を生んだ福井・鯖江の西村プレシジョンがその好例です。ペーパーグラスを成功に導いた西村昭宏さんは、もともとは自社の本業とは関係ない、東京の会社で働いていました。

 なぜ、こうしたことが起こるのでしょうか。経営学的には理由は明快だと思います。イノベーションには遠くにある知と知を組み合わせる「知の探索」が必要です。しかし、人間…

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入山章栄

早稲田大大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

 1972年生まれ。慶応大学経済学部卒業。米ピッツバーグ大経営大学院から博士号を取得。2013年に早稲田大大学院准教授。19年から現職。世界の経営学の知見を企業経営者やビジネスパーソンが実践できる形でわかりやすく紹介している。主な著書に「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)など。