冨山和彦の「破壊王になれ!」

冨山和彦氏が斬る「なぜ官僚のレベルは低下したのか」

冨山和彦・経営共創基盤グループ会長
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詐欺容疑で逮捕され警視庁赤坂署に移送される経済産業省官僚の桜井真容疑者(中央)=東京都千代田区で2021年6月25日、宮武祐希撮影
詐欺容疑で逮捕され警視庁赤坂署に移送される経済産業省官僚の桜井真容疑者(中央)=東京都千代田区で2021年6月25日、宮武祐希撮影

 そんたくによる公文書改ざん指示、許認可に関わる幹部の接待問題、安全保障を名目にした不透明な資本市場への介入、そして国の制度を舞台にした深刻な詐欺事件――。国家公務員1種、いわゆるキャリア官僚と言われる人たちの不祥事があとを絶たない。

 同時に、採用段階においてキャリア官僚職の人気が低迷し、かつては学歴エリート路線の頂点として象徴的だった、一流官庁の東大卒比率も大きく低下している。

 ある意味、クイズ王的なステレオタイプの東大生はキャリア官僚としても役に立たないので、比率低下自体は問題ではないが、基礎能力、いわゆる「地頭」(素の頭の良さ)、「自頭」(自分の頭で考える能力)において、国家公務員1種を目指す若者のレベルは人気とともに下がっていることは明らかだ。

改革繰り返しても改善されず

 そこでよく議論されるのが、一つは今どきの官僚のモラルが低いのでけしからん、倫理教育を徹底せよという精神論。もう一つは長時間で過酷な労働のわりに給料も相対的に安いのは問題なので、時短をもっと徹底せよと言う待遇改善論。

 しかし、この議論は大蔵省接待問題が起きた1990年代からずっと繰り返され、そこで公務員制度改革や天下り規制、内閣人事局の設置などいろいろな工夫が行われてきたが、問題は改善するどころか悪化している印象がある。

 また、今回のコロナ禍の中、多くの役所において有事に際して臨機応変に対応する組織能力の低下が露呈し、政治的な決断が現場レベルの執行でつまずくケースが続出している。今までの改革努力を否定するものではないが、この状況をみると現在の国家公務員制度、特にキャリア官僚制度は、もっと根本的な部分で耐用期限切れを迎えているように思う。

 私自身が、一つ選択が違っていれば、いわゆるエリート官僚の道を進んでいたかもしれない学歴だし、高校や大学のクラスメートの3割くらいが官僚になっているので、彼らの生態、人生を間近で体感してきた。我が友人たちは、残っていればちょうど「次官」とか「長官」をやっているタイミングである。

 また、私も2003年から07年まで、当時の小泉政権の目玉政策を担う政府系機関「産業再生機構」で、10兆円の公的資金枠の執行に関する最高実務責任者をやったので、ある意味、準官僚的な立場で仕事をし、役所からの出向者に関しては公務員の「俸給表」ベースの人事評価も行った。今回はこうした経験も踏まえて、現在のキャリア官僚制度が抱えている根本的な構造問題について考えてみようと思う。

政治主導の政策形成は「必然」

 社会的な価値観の変化・多様化、産業構造の急激な変化、国際的には地政学的な大変動による国家間の利害関係の複雑化と対立化……。世界共通で国としての政策形成は難しくなり、その結果、…

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冨山和彦

経営共創基盤グループ会長

 1960年生まれ。東大法学部卒。在学中に司法試験に合格。米スタンフォード大経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループなどを経て、政府系企業再生ファンドの産業再生機構の最高執行責任者(COO)に就任し、カネボウなどを再建。2007年、企業の経営改革や成長支援を手がける経営共創基盤(IGPI)を設立し最高経営責任者(CEO)就任。2020年10月よりIGPIグループ会長。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長。