経済記者「一線リポート」

人気上昇のネスタリゾート 裏にUSJ復活の立役者

小坂剛志・大阪本社経済部記者
  • 文字
  • 印刷
空中を500メートル以上も高速移動する「スカイ・イーグル」=兵庫県三木市のネスタリゾート神戸で2021年6月11日
空中を500メートル以上も高速移動する「スカイ・イーグル」=兵庫県三木市のネスタリゾート神戸で2021年6月11日

 なぜ「顔のない」娯楽施設が人気のレジャーランドに生まれ変わったのか。山や田んぼに囲まれた兵庫県三木市の「ネスタリゾート神戸」のことだ。公金ムダ遣いの象徴とされた保養施設跡地に開業。当初は入場者数が伸び悩んだが、施設内容を見直し、飛躍を遂げた。仕掛けたのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させた人物が率いるマーケティング会社。人気の秘密は、プロ集団のこだわりから導いた「逆転の発想」にあった。

 「『スカイ・イーグル』でいきますよ」。スタッフの元気な声に、記者はもはや逃げることはできないと悟った。地表から12メートルの高台からは、青空の下に広がる山々を一望できる。これから鳥が飛ぶように空中を移動するかと思うと、背中に汗が流れた。

 ネスタリゾート神戸(ネスタ)の目玉アクティビティー「スカイ・イーグル」。うつぶせの姿勢のまま、「ハーネス」と呼ばれる安全器具とヘルメットを装着し、560メートル先の地点まで高速で移動する。広報担当者から施設概要の話を聞くだけのつもりだったが、いつの間にか“体験飛行”することになっていた。時速約75キロ。ジェットコースターは苦手ではないが、ここまで長い距離をハーネスだけで移動するのは初めてだ。どこまでの恐怖か、想像もできなかった。

 「スカイ・イーグル!」。本番のかけ声とともに記者の体は空中へと放たれた。数メートル先にある眼下の景色が、猛スピードで近づいてくる。実際に動き出すと、肌に感じたのは恐怖感ではなく、空中を高速で移動しているという爽快感だった。

 スカイ・イーグルは、2020年7月に新設された。同じエリアには、直径3・2メートルの透明のボールの中に入り、急斜面を転げ落ちるアクティビティーもある。もともとはのどかな花畑が広がり、来場者の歓声が聞こえてくるような場所ではなかった。

グリーンピア跡地に開業も伸び悩み

 ネスタは16年、大規模年金保養施設「グリーンピア」の跡地に開業した。グリーンピアは巨額の年金資金を投じて全国各地に建設されながらも経営破綻し、公金のムダ遣いと批判を浴びた施設。パチンコやゴルフ場を営む「延田グループ」(大阪市)が15年に土地や施設を兵庫県から買い取り、約230万平方メートルという広大な敷地にホテルやプール、温泉、スポーツ施設などを整備した。しかし、来場者数が伸び悩んだため、施設の魅力を高めようと延田グループが協業を持ちかけたのがマーケティング会社「刀(かたな)」(同)だった。

 18年春に「刀」がネスタに関わってから、1年あまりを経た19年6月で入場者数は前年2月から2倍に、売上高は同2・6倍にそれぞれ急増。その後、新設したスカイ・イーグルなどが集客に貢献し、新型コロナウイルス禍にもかかわらず、20年9~12月の売上高は19年同期比で7割増え、20年12月期は初めて営業黒字(償却前)に転じた。なぜ「刀」との協業が、急成長につながったのか。その理由を解き明かすには、まず大阪市のテーマパーク、USJの復活劇からみる必要が…

この記事は有料記事です。

残り3332文字(全文4593文字)

小坂剛志

大阪本社経済部記者

 1980年山口県生まれ。関西学院大卒。松江や高知、奈良支局を経て2015年から大阪経済部。2019年から東京経済部で自動車業界、国土交通省を担当。2021年から再び大阪経済部。