毎日家業×創業ラボ

「大喜利のように考え、答える」尾鷲発・町づくりのワザ

道永竜命・毎日新聞中部報道センター記者
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尾鷲ヒノキの間伐材に感謝の気持ちを書いて浮かべる「100のありがとう風呂」=夢古道おわせ提供
尾鷲ヒノキの間伐材に感謝の気持ちを書いて浮かべる「100のありがとう風呂」=夢古道おわせ提供

 危機を乗り越えた三重・尾鷲の観光交流施設「夢古道おわせ」。お母ちゃんのランチバイキングと海洋深層水を使った温浴施設、土産物販売の3本立てで、年間20万人が来る施設に成長しました。オープン前は誰もが失敗すると言っていた立地。支配人を務める伊東将志さん(47)の企画力と発信力のたまものですが、伊東さんは「自分は何かに秀でているわけではない。でも誰よりも悩んできたかもしれない」と話します。最終回の今回は、自ら悩み、考え、町と人を動かした数々のプロジェクトを追いかけます。

私の家業×創業ストーリー・伊東将志さん<4>

 温浴施設「夢古道の湯」オープン翌年の2009年から始めた「100のありがとう風呂」は、伊東さんが誰よりも悩み、調べて、考えて、生み出したプロジェクトの一つだ。

 尾鷲にとってヒノキは身近な存在。林業のこともよく知っているつもりでいたが、伊東さんはそこを改めて考えてみた。ここには多くの木があって、森がある。

 でも林業の人たちは「木がない」と言う。なぜなのだろう。細い木は売れないから、間伐の費用が賄えない。しかし、間伐をしなければ、森が育たない。そうした悪循環に陥っていたが、林業の人たちは「また良い時が来るから、その時にやろう。今もうからないものはやらない」とさじを投げていた。

林業をどうする?尾鷲のヒノキで心も体も温かく

 「自分たちなら何ができるだろうか」と考え抜いて出した答えが、間伐材を輪切りにした木片に、子どもたちが感謝のメッセージを書き、母の日や父の日、敬老の日に風呂に浮かべることだった。

 体だけでなく心も温まるこの企画は集客にもつながるため、全国の温浴施設に広まった。広まれば広まるほど、尾鷲ヒノキの消費につながり、間伐も進む。子どものメッセージに目を細めながら…

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道永竜命

毎日新聞中部報道センター記者

 1979年北海道生まれ。明治大学卒。北海道の地方紙記者を経て、2012年毎日新聞社に入社。中部報道センターを振り出しに岐阜支局、大垣通信部を経て、再び中部報道センター。19年5月から東京本社経済部で、電機メーカーなどの製造業を中心に取材。20年4月からはコロナ禍で進む企業のデジタル化などを取材しながら、IT企業を担当した。21年4月から3度目の中部報道センター。