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三菱電機の検査偽装「旧財閥の冠企業」で不正なぜ多発

今沢真・経済プレミア編集部
記者会見で辞意を明らかにする三菱電機の杉山武史社長=東京都千代田区で2021年7月2日午後4時31分、長谷川直亮撮影
記者会見で辞意を明らかにする三菱電機の杉山武史社長=東京都千代田区で2021年7月2日午後4時31分、長谷川直亮撮影

三菱電機・検査不正(1)

 三菱電機で鉄道向け空調機器の検査不正が発覚した。生産現場で35年以上も受け継がれた組織的な不正で、杉山武史社長は「極めて悪質と言わざるを得ない」と認め、辞意を表明した。日本を代表する企業グループの名門企業で不正が後を絶たないのはなぜか。

 不正は、鉄道車両の屋根や床下に搭載する空調機器を製造していた長崎製作所(長崎県時津町)で発覚した。発注したメーカーが指定した検査を省いたり、指定された方法と異なる条件で検査したりしていた。不正は少なくとも1985年から続いていた。

 杉山社長は7月2日の記者会見で、不正が続いた理由について「お客様との関係よりも自分たちの論理を優先する業務の進め方だった」と語った。さらに「技術力、品質に対する考え方を絶対視し、自分たちの正しいことでいいというおごった考えが根っこにあった」ことも背景にあると説明した。

創業100年の節目に

 三菱電機は1921年に三菱造船電機製作所から分離独立して発足した「100年企業」だ。売上高は4兆円を超え、電機メーカーとしてはソニーグループ、日立製作所、パナソニックに次ぐ規模を誇る。だが、2018年に子会社でゴム製品の検査不正が判明し、その後も鋳鉄製品や半導体製品、電気制御部品でも不正が見つかった。

 品質に関わる不正ばかりではない。19年に20代の新入社員が上司のパワハラを受けて自殺した問題のほか、過労による自殺も相次いだ。弁護士や大学教授らが選ぶ「ブラック企業大賞」に2年連続で選ばれた。

 不祥事が起きても記者会見を開かず、説明責任を尽くさない企業体質も批判された。今回も、6月14日に社内で不正が…

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経済プレミア編集部

1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア創刊編集長。19年から同編集部。22年4月に再び編集長に。同9月から編集部総括。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」など。16~18年度城西大非常勤講師。