
JR東日本は6月30日、新潟・福島豪雨(2011年7月)で鉄橋が数カ所にわたって流失し、不通が続いている只見線の会津川口─只見間について、第一種鉄道事業廃止の届け出と、第二種鉄道事業の許可申請を国土交通省に行った。JR東日本と福島県が17年6月に交わした基本合意書に基づくもので、22年内の運転再開へ向けた手続きの一環である。
第一種鉄道事業は自社の線路で列車を運行する事業で、日本では最も一般的な形だ。これに対し第二種鉄道事業は、他の事業者の線路を借りて列車を運行する事業を指す。
基本合意書に沿って言うと、JR東日本が不通区間の復旧工事を完了した後、線路などインフラに関わる鉄道施設や土地は福島県へ譲渡する。JR東日本は福島県から線路を借りて列車を運行する形をとる。
貸手となる福島県は、線路の保有はするが列車の運行はしない第三種鉄道事業者となり、インフラ部分の維持・管理を基本的に担う。
こうした経営方式は「上下分離方式」と呼ばれるが、これによって何が変わるのだろうか。
鉄道の経営難を救う一手
鉄道事業は1986年公布の鉄道事業法で3種類に分かれた。目的の一つは、国鉄の分割・民営化(87年)にあたり、貨物輸送だけはJR貨物という一つの会社で全国をカバーできるようにするためだ。現在もJR貨物はほとんどの路線で第二種鉄道事業者であり、線路の維持・管理などの負担が少ない中で経営を行っている。
そして鉄道事業が3種類に分けられたことで、鉄道の経営難を解決する手段として「上下分離方式」の導入がしやすくなった。
鉄道インフラは維持・管理のために固定費がかかり、収入の多寡にかかわらず、これを投…
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