経済プレミアインタビュー

アパ社長「あなた、批判を気にしちゃうタイプ?」

三上剛輝・毎日新聞経済部記者
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アパホテルの元谷芙美子社長=東京都港区で、丸山博撮影
アパホテルの元谷芙美子社長=東京都港区で、丸山博撮影

 一度インタビューしてみたい人物がいた。コロナ禍でも、強気の拡大路線を突き進むホテルグループの「アパ社長」こと、元谷芙美子さん(74)。華やかな帽子をかぶり、パッケージに顔写真が入った「アパ社長カレー」なる商品まである。インパクト強めな元谷社長のもとを訪ねると、意外なことに、もともとは「控えめな性格」なんだとか。「アゲンストはチャンス」と言い切るアパホテル社長の素顔と経営戦略とは。【聞き手・三上剛輝/毎日新聞経済部】

アパホテル・元谷芙美子社長に会いに行く

 東京メトロ・赤坂見附駅近くのアパグループ東京本社。元谷社長はライトブルーの帽子にミニスカート、柄物のストッキング姿で出迎えてくれた。「赤のお帽子と迷ったけれど、季節を考えて涼やかな色にしたんよ」。昔から裁縫が得意で、帽子のコサージュは手作り。あいさつもそこそこにマスメディアに関する持論を語り、「みんなお飾りの社長と思って会いにくるんやけど、意外にしっかりしとるやろ?」と笑う。独特の「アパ社長ワールド」に押されながらも、質問を始めることにした。

「お前やれ」47歳でもらったチャンス

 ――記者 元谷社長が大写しになったインパクト強めの看板をあちこちで見かけます。他にはあまり例がありませんが、自ら広告塔になったのはなぜですか?

 ◆元谷社長 注文住宅メーカーだったアパ(当時は信開産業)が、ホテル業界に参入して10年の節目になる1994年、(夫の元谷外志雄(としお))代表から「ホテルのホスピタリティー、おもてなしには女将(おかみ)が必要だ」と言われ、47歳で社長に就任しました。「お前やれ」って、チャンスをもらってね。

 社員の前で「ホテル業界のジャンヌ・ダルクになる!」と宣言したんやけど、当時はまだ全国展開する前。北陸にある小さなホテルで、赤字スレスレ。拍手もなくて、会場が静まり返っていたのを覚えてるわ。

 ――それは厳しいスタートです。

 ◆でも、私は「せっかくもらったチャンスは絶対ものにする」と責任感に燃えていてね。ホテルの存在を知ってもらうために何ができるかを考えて。そこで取った戦略が自分の顔を前面に出すこと。当時、海外では経営者が自分の顔を看板や広告に大きく出し、会社のビジョンを語るのは当たり前だったけれど、日本では珍しかったんよ。

 これも書いてほしいんやけど、私はもともと控えめなのね。別に目立ちたがり屋とかではなくて。ただ人柱になって社長として責任を明確化するために顔を出した。「私が社長です。どこにも逃げないぞ」って使命感だよね。

 トップの顔が分かった方がお客様の信頼を得やすいという思いもあってね。せっかくの女性社長だから華やかなイメージがいいと思ったけれど、自分の容姿に特に自信はない。だから知性をプラスしようと思って大好きなお帽子をかぶることにしたんよ。今は240個くらい持ってるかな。

「人生、アゲンストはチャンスなんや」

 ――反響はどうでしたか?

 ◆もうびっくりするくらいクレームの嵐。総スカンでね。ある大学教授からは「公共の福祉に反する」というお手紙までもらったよ(笑い)。そうしたお手紙には、全部目を通して「1回会いに来てもらえればファンになってもらえる自信があります」とホテルの無料宿泊券とセットで返送してね。そうしたら実際に金沢まで来てくれて、お話ししたら「面白い人だ」と言ってもらえてさ。こうしたことがマスメディアにも取り上げられ、知名度があがったんよ。

 ――クレームの嵐で心が折れそうになりませんでしたか?

 ◆そういう批判を気にしちゃうタイプ?なら教えといてあげるわ。人生、アゲンストはチ…

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三上剛輝

毎日新聞経済部記者

 1982年名古屋市生まれ。名古屋大経済学部卒。中部地方の経済紙記者を経て、2009年毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道センターを経て、19年10月から東京経済部。主に保険業界や信託銀行、株価の動向を取材している。