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「育休中に妊娠」産休の取り方で変わる“給付金の額”

井寄奈美・特定社会保険労務士
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 医薬品メーカーに勤めるA子さん(29)は、現在育児休業中です。2019年末に第1子を出産しましたが、子が1歳になったときに保育所が決まらず、育休を6カ月延長しました。しかし、今年4月も子を保育所に入れることができず途方に暮れていたところ、第2子の妊娠が判明しました。

産前休業を申請すべきかどうか

 第2子の出産予定日は、今年11月半ばです。第1子が保育所に入れなかったので、再度育休を延長し、その期間は今年末までとなっています。A子さんは、いまの状況から職場復帰せず、第1子の育休と第2子の産前産後休業を連続してとろうと考えています。

 産前休業は、出産予定日の6週間前からとることができますが、第1子の育休中であるため、会社に改めて産前休業を申請すべきかどうか、迷っています。知人から、育休と産前休業のとり方で、育児と出産に関する給付金に違いがあると聞いたからです。

出産や育児の休業と給付金

 働く人が出産や育児のために取得できる休業と給付金について説明します。

 まず、出産についてです。労働基準法は、産前産後休業の規定を定めています。

 産前休業は、期間が出産予定日からさかのぼって6週間(多胎妊娠は14週間)で、働く人が希望した場合に会社は付与しなければなりません。

 産後休業は、出産日の翌日から8週間が期間です。産前休業と異なり、働く人の希望の有無に関わらず、会社はその人を働かせることができない強制付与の休業です。ただし、産後6週間がたち、働く人が希望して医師が就労を認めた場合は、働くことができます。

 会社は、産前産後休業(産休)中の賃金の支払いについて就業規則で決めることができます。出産など働く人の都合で働けない期間に対して、会社は賃金の支払い義務はありません。多くの会社が産休中は無給とし、働く人は健康保険制度の出産手当金を受給しています。

 出産手当金は、産前6週間・産後8週間のうち、出産で働く人が会社を休んだ期間に、賃金の支払いがない場合、支給されます。その額は、休業1カ月あたり、おおよそ賃金の67%です。

 次に育児についてです。育児のための制度は、育児・介護休業法に規定があります。

 1歳未満の子を育てる働く人は男女問わず、会社に申し出ることで育児休業を取得できます。保育所に入れないなどの事情がある場合、最長2歳になる前日まで育休を延長できます。

 会社は、育休中の賃金の支払いについても就業規則で決めることができます。育休中も賃金の支払い義務はありません。多くの会社が育休中は無給とし、働く人は雇用保険制度の育児休業給付金を受給しています。給付金は休業開始から6カ月は休業1カ月あたりおおよそ賃金の67%、それ以降はおおよそ50%です。

休業の取り方で給付金が併給

 では、A子さんはどのように対応するとよいでしょうか。A子さんの場合、休業の取り方は次の二つのパターンがあります。

 一つめは、今年9月末まで第1子の育休とし、産前6週間となる10月から第2子の産前休業をとるパターン(産前パターン)です。

 二つめは、今年11月半ばの出産日まで第1子の育休とし、第2子の出産後に産後休業に入るパターン(育休パターン)です。

 通常、「産前パターン」が自然と考える人が多いでしょう。給付金も、出産手当金(約67%)の方が、育児休業給付金(6カ月経過後は約50%)より多いからです。

 しかし、実際には「育休パターン」の方が、A子さんは給付金を多く受け取…

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井寄奈美

特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/