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長引く自粛生活で気弱に? あるシニア女性の心配ごと

梅津順江・株式会社ハルメク 生きかた上手研究所所長
 
 

 私が所属する会社のシニア女性向け月刊情報誌「ハルメク」には、「あなたからハルメクへの短い手紙」という欄があります。読者からはがきで、悩みや気になること、意見などが寄せられます。当社の顧客の悩みや新たなニーズを見つけるツールにもなっていますが、先日、気になる声がありました。

60代前半の女性「認知症が心配」

 新型コロナウイルス禍が1年以上続いていますが、多くのシニア女性は社会の変化に戸惑いながらも、人生を前向きに生活を続けています(「コロナ禍の1年『シニア女性の生活と意識』どう変化?」参照)。こうした中、次のようなはがきが5月末に届きました。送り主は63歳の女性でした。

 「老夫婦二人で生活しているが、この状況下、ステイホームを続け、外出も週1回の食料品の買い出しくらい。会話も(夫婦で)互いに少なくなってきている。テレビがお友達ではいけないと思いつつ、変化の少ない生活で不安になる。どうか(私たち)二人が認知症にならないようにと願うこのごろです」

 送られてくるはがきの中には、現在の状況に対して「ストレスに感じている」「気分が沈みがち」「うつ病になるのではと心配」といった声が少ないながら交じります。気弱になってしまう人がいることを実感しますが、私が上で紹介した声に驚いたのは、60代前半の人が認知症を心配したり、自分のことを「老夫婦」と言ったりしていることでした。

コロナ禍のシニアの課…

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株式会社ハルメク 生きかた上手研究所所長

大阪府生まれ。杏林大学社会心理学部卒業後、ジュジュ化粧品(現・小林製薬)入社。ジャパン・マーケティング・エージェンシーを経て、2016年3月から現職。主に50歳以上のシニア女性を対象にインタビューや取材、ワークショップを行っている。著書に、「この1冊ですべてわかる 心理マーケティングの基本」(日本実業出版社)などがある。