ニッポン金融ウラの裏

「金融おせっかい庁」は真の“育成庁”に脱皮できるか

浪川攻・金融ジャーナリスト
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金融庁=2020年1月10日、古屋敷尚子撮影
金融庁=2020年1月10日、古屋敷尚子撮影

 金融庁は7月8日付で長官人事を行った。氷見野良三長官(61)が退任し、総合政策局長を務めていた中島淳一氏(58)が昇格した。新体制のもとでの金融行政の課題を考えてみたい。

 近年、金融庁は「金融処分庁」から「金融育成庁」への転換を強調してきた。金融処分庁とは、法令違反などを厳格に処分する“コワモテ行政”の象徴的な表現だ。後手に回りかねないその方式を改め、将来に向けた育成に主軸を置くという考え方が「金融育成庁」である。

 ところが、「育成という名目であれこれと注文してくる」(有力地銀)という批判めいた声も銀行業界から上がっていた。「金融おせっかい庁」の別名でも呼ばれた。そうしたなかで、氷見野長官の下での1年間は微調整がなされ、金融庁が一歩引き下がった形で銀行などとの対話が続けられてきた。

「顧客本位」どう徹底するか

 では、この先はどうか。そもそも金融庁が「金融育成」という言葉をもちだしてきたところに課題の根っこがある。金融ビジネスが必ずしも顧客本位ではなく、時代の潮流に乗り遅れているという見立てだ。

 その判断は正しいが、そこで細かな指導や“説教”をする以上に、行政として本当に求められることがある。それは「メカニズムの創出」である。

 たとえば、個人向け証券ビジネスでは、回転売買による手数料稼ぎのような荒っぽいビジネスが絶えない。金融庁はこれに対して「顧客本位の徹底」を強く要請してきた。だが、それだけでは足りていない。顧客本位とは程遠いビジネスがマーケットから選別され、追い出されるメカニズムを作り上げる必要がある。

顧客への情報開示、まだ不足

 金融庁は顧客向けの「重要情報シート」と…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。