
平田仁子・気候ネットワーク理事に聞く(下)
「環境分野のノーベル賞」と呼ばれる「ゴールドマン環境賞」を受賞した環境NGO「気候ネットワーク」理事・平田仁子(きみこ)さんへのインタビュー最終回は、原発に依存する日本のエネルギー政策や官僚システムの弊害が話題となった。平田さんはいま何を考え、どんな社会を目指しているのだろうか。【聞き手は経済プレミア編集長・川口雅浩】
――石炭火力発電所が日本の温室効果ガスの最大の排出源であることはわかりました。石炭火力の代替エネルギーはどうすべきでしょうか。
◆平田仁子さん 代替を考える前に重要なことがあります。東京電力福島第1原発の事故直後を除けば、日本では原発停止後も電力不足は起きていません。発電の設備は十分にあるのです。今から新規の原発や火力発電所を建設する必要はありません。
この状況から、私たちは石炭火力の新設計画を止めるだけでなく、これからは既設の石炭火力を減らす方向に向かわなければいけないと思っています。
――その場合の代替はどうするのですか。
◆まず、今まで以上に省エネを進める必要があります。我慢ではなく、効率を向上させるなど、スマートなエネルギー利用を進めていくことが大切です。その上で、使うエネルギーは、再生可能エネルギーを増やすことに尽きます。火力発電の中で天然ガスは石炭より二酸化炭素(CO2)排出が少ないのは事実ですが、気候変動の問題は深刻です。いつまでも使ってよいとは言えません。
原発は温暖化対策?
――原発については、どう考えますか。
◆とてつもないリスクがあり、コストもかかる原発に私たちは頼るべきでないですし、現実に…
この記事は有料記事です。
残り956文字(全文1652文字)
川口雅浩
経済プレミア編集部
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。