藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

サンサルバドル「救世主」の町に見た強烈な格差

藻谷浩介・地域エコノミスト
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サンサルバドルのショッピングモールのメトロ・セントロ。デザインセンスも清潔さも秀逸(写真は筆者撮影)
サンサルバドルのショッピングモールのメトロ・セントロ。デザインセンスも清潔さも秀逸(写真は筆者撮影)

中米バスの旅編(4)

 コロナ禍直前の2020年1月初旬、夜8時過ぎ。エルサルバドルの首都サンサルバドルの場末で国際バスを降り、方向を失った筆者。しかし危ない目に遭う前に、運よくタクシーを拾うことができた。翌日は旅行最終日。夜7時の飛行機で、メキシコ市経由で帰国するまでの間、宿に荷物を置いて市街地を探検する。

高級住宅街を抜けるとスラム

 サンサルバドルの中高級住宅街エスカロン地区にあるゲストハウスの、プールのある陽光燦燦(さんさん)の中庭で、朝食をいただく。空いたお屋敷を商売に転用しているようで、これで1泊9000円はお値打ちである。

 この町は、活火山に囲まれた標高700~900メートルの盆地の中にあり、東西と南北それぞれ10キロ余りに広がっている。筆者はその西北西の丘の上にいるので、これから東の方へ下りて行ってみよう。

 ホテルの周辺の住宅街は、清潔で落書きなどもなく、人通りも少なく、日本の町の高台住宅地を思い出させる。東に向かう街路の左手、つまり北側斜面には、高級コンドミニアムや私立大学のキャンパスがあったが、塀と緑地に囲まれ、門番が見張っているので、どんな感じか入って見物することはできない。

 他方で南側の浅い谷は、トタンの仮小屋が並ぶスラムとなっていた。合間に見える谷川は黄色く濁り、悪臭が立ち上ってくる。世界各地で見た中でも特に強烈なコントラストだが、スラムには人影もなく声も聞こえない。

大聖堂には物乞いをする女の子

 数キロ歩いて都心に近づくと、歩道脇に捨てられたゴミが目立つようになり、中学生くらいの年齢のホームレスの兄弟が、段ボールの上に突っ伏して寝ていた。足元で幼…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。