
A子さん(25)は金融関連会社で営業事務をしています。直属の上司との相性が悪く、強いストレスを感じていました。ある朝、自宅の玄関でめまいがして座り込み、動けなくなってしまいました。心療内科で「適応障害」と診断され、1カ月ほど休職することになりましたが、その休職について友人から言われた「労災」のことが気になっています。
適応障害で休職
A子さんは休職前、夜に寝付けないことがたびたびあり、徐々に出勤するのが憂鬱になっていました。ただ、1人暮らしで、奨学金の返済を抱えていて貯金はなく、毎月ギリギリの生活のため仕事を辞めることは考えられません。毎日、自分を奮い立たせて出勤している状況でした。
そうしたある日、めまいが起こりました。仕事を休んで1日寝込み、連絡した大学時代の友人が翌日、自宅に来て心療内科に付き添ってくれました。病院からの帰り道、友人から「職場のストレスが原因で休職するのなら、労災保険が適用されるのでは」と言われました。A子さんは自分が労災にあたるのかどうかわからず悩んでいます。
病気やけがのときに利用できる制度
会社で働く人が病気やけがをしたときに利用する制度には、労災保険と健康保険があります。この二つの制度について説明し、A子さんのケースを考えます。
業務上の理由で病気をしたりけがをしたりした場合は、労災保険の給付を受けることができます。一方、業務外の病気やけがは、健…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/