冨山和彦の「破壊王になれ!」

冨山和彦氏が語る「破壊的改革者」中西宏明さんの〝遺言〟

冨山和彦・経営共創基盤グループ会長
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中西宏明さん=東京都千代田区で2010年12月27日、久保玲撮影
中西宏明さん=東京都千代田区で2010年12月27日、久保玲撮影

 経済界の破壊的な改革リーダーだった経団連前会長の中西宏明さんが逝去された。ポストコロナに向け、日本経済と日本企業が、デジタル革命とカーボンニュートラルの時代の生き残りをかけて、まさに破壊的な大変容(トランスフォーメーション)を始動しなくてはならないこのタイミングにおいて、実に痛恨の極みである。

経営危機の日立を大改造

 中西さんと最初にお会いしたのは7、8年前、政府の成長戦略を議論する会議だった。席が50音順なので隣り合わせになることが多く、会議の合間によく雑談をするようになり、会議での発言ぶりも、個人的な会話でも、お互いに甚だしく波長が合った。

 私は以前から、中西さんが社長、会長を務めた日立製作所が経営危機から再生を果たし、ニッポンの伝統的大手メーカーからソリューション企業へと大変容していったことに敬意と関心を持っていた。

 事業会社として史上最大の7873億円の赤字を計上した2008年度当時、日立は古色蒼然(そうぜん)たるザ・日本的経営の保守本流、巨大メーカーというイメージだった。グローバル化とデジタル革命の嵐が吹き荒れ、そこにリーマン・ショックも襲いかかる中、いわゆる総合電機メーカーの中でも、失礼ながら変革ができず淘汰(とうた)されていく可能性の高い企業という認識を私は持っていた。

 しかし、経営危機に際して会長兼社長に就いた川村隆さんとタッグを組み、さらにその後を引きついだ中西さんは、足掛け10年で見事にグローバル×デジタルモードの会社に大改造し、私の言葉で言う「コーポレートトランスフォーメーション」を実現してしまった。

 このことは驚異的であるとともに、「あの日立でさえあそこまで変われたのだから」という意味で、多くの古くて大きい日本企業に勇気を与えている。この功績は計り知れない。

「稼ぐ力」向上も使命

 そういうわけで、隣り合わせの中西さんと話すのが当時、政府の会議に顔を出す最大の動機づけだった。

 私もグループ5000人の従業員を抱える企業経営者であり、日立グループと接点のある事業もやっていたので、時折、生々しいビジネスのひそひそ話もしたが、そんな時も回りくどい修辞はなく、トップダウンで竹を割ったような結論がスパッと出る。

 いわゆるサラリーマン財界人には、空気を読み、あちこちに気を使い、ものごとをはっきり言わない湿っぽい感じの人が少なくないが、中西さんは、…

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冨山和彦

経営共創基盤グループ会長

 1960年生まれ。東大法学部卒。在学中に司法試験に合格。米スタンフォード大経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループなどを経て、政府系企業再生ファンドの産業再生機構の最高執行責任者(COO)に就任し、カネボウなどを再建。2007年、企業の経営改革や成長支援を手がける経営共創基盤(IGPI)を設立し最高経営責任者(CEO)就任。2020年10月よりIGPIグループ会長。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長。