高齢化時代の相続税対策

海外移住した父が急死「相続税」どちらの国で支払うか

広田龍介・税理士
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 企業経営者のIさんは5年前、長年の夢だった海外移住を実現した。子供2人も独立して親の手を離れたのを機に、日本での生活を望む妻とは協議離婚をして、単身日本を後にした。日本の事業で成功した資金を元手に、海外で新規事業に乗り出すと意気込んでいた。

相続・税務手続きに「時間と費用」

 だが、その思いも半ばに、5年後、Iさんは不慮の事故で亡くなった。

 Iさんの財産は日本国内と海外の両方にあった。相続人は、日本で暮らす子供2人だが、父の財産がどこにどれぐらいあるのかは、何も聞かされていなかった。それもそのはず、Iさん自身、事業に専念するつもりでいたため、相続対策については何ら手を打っていなかったのだ。

 幸い、Iさんには、事業計画について相談している弁護士がおり、Iさんが海外に持つ財産については、事業計画を通じてその大部分を把握していた。また、5年前の協議離婚も担当していたため、Iさんが日本国内に持つ財産についてもおおむね把握していた。

 そこで、子供たちは、相続について全てをこの弁護士に委任することにした。こうして日本での相続税申告をどうにかまとめることができた。

 だが、海外財産の相続や税務手続きについては、その国の法律があるため、簡単に財産を相続移転したり処分したりすることができなかった。その国の弁護士や税理士に依頼して手続きしなければならず、かなりの時間と費用を要することになった。

国により異なる「相続課税」

 Iさんのように、海外に移住し、財産が日本国内と海外とで混在するケースでは、相続対策は非常に難しくなる。

 相続にかかわる税務手続きは、被相続人(亡くなった人)と相続人のそれぞれの…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。