ニッポン金融ウラの裏

五輪とコロナで「関心ゼロ」政府の成長戦略の注目点

浪川攻・金融ジャーナリスト
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経済財政諮問会議・成長戦略会議の合同会議で発言する菅義偉首相=首相官邸で2021年6月18日、竹内幹撮影
経済財政諮問会議・成長戦略会議の合同会議で発言する菅義偉首相=首相官邸で2021年6月18日、竹内幹撮影

 政府は6月18日、「骨太の方針2021」と「成長戦略実行計画」を閣議決定した。新型コロナウイルスと五輪開催をめぐる議論が戦わされるなか、実行計画の注目度は極めて低かったが、デジタル化推進や携帯料金値下げなど、菅義偉内閣が取り組む成長戦略が列記された。

新規株式公開の“特殊性”

 政府は項目の一つに、「新規株式公開(IPO)における価格決定プロセスの見直し」を盛り込んだ。欧米に比べ、わが国は革新的なアイデアを持つベンチャー企業が少ない。生きのいいベンチャーを資金調達面で後押しする戦略だ。

 新規事業を興し、海外展開を進めようとする企業自体が極めて少ないことが問題の根本にある。それを、資金調達面で後押ししてもどれだけの効果が期待できるかは疑問だ。ただ一方で、新規株式公開をめぐる市場のあり方に問題があるのも事実だ。

 実行計画では、新規株式公開をめぐる日本市場の特殊性を二つ取りあげた。まず、上場前に募集した投資家に株式を売る価格(公開価格)と、上場時に市場で初めて売買された価格(初値)との間に大幅な開きがあることだ。初値が公開価格を大く上回ることが多いのだ。

 初値が公開価格を上回る率を国ごとに比べると、米国17.2%、英国15.8%に対して、わが国は48.8%になっているという。株式を取得した投資家が利益を上げている半面、公開価格が抑えられ、企業の資金調達額が少なくなっているのではないかというのだ。

個人投資家への割り当て偏重

 特殊性の2点目は、公開価格に基づく株式の割当先が、個人投資家に偏っているとの指摘だ。実行計画によると、米国では新規上場時における株式割当先は年金など機関投資家…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。