
独身のA輔さん(29)は、医薬品製造販売会社に勤めています。総合職で新卒入社して以降、本社の管理部で総務関連の業務を経験し、今年4月の人事異動で地方都市にある工場に配属となりました。A輔さんは、仕事とプライベートとを切り離し、就業中は仕事に集中するタイプです。しかし、工場では仕事とプライベートの境界があいまいで、大きなストレスを感じるようになっています。
プライベートが丸裸
工場には、工場長と製造ラインを担当する男性社員数人、製造ラインの作業を担うパート従業員の女性が60人ほどいます。男性はいずれも40代以上で、A輔さんは最年少です。
A輔さんは工場の管理部リーダーとして、パート従業員のシフト調整や給与計算などを担当します。その際に過度にプライベートを詮索されたり、世間話に付き合わされたりして、予定通りに仕事を進められないことがあります。
工場の稼働時間は午前8時から午後5時15分で、45分の昼休みの他、午前10時と午後3時に15分の休憩があります。パート女性たちは休憩時間になると、持ち寄ったお菓子を配り合っていました。
A輔さんは本社のころの習慣で、昼休み以外は休憩を取らず、仕事を続けていました。しかし、事務所の隣にある休憩室からパート女性がお菓子を持ってやってきます。A輔さんは甘いものが苦手ですが断り切れず、机の引き出しがお菓子であふれかえりました。
パート女性たちからは「彼女はいるのか」「休日は何をしているか」「両親は何歳か」といったことを聞かれます。A輔さんが話した内容はすぐに他のパート女性たちも知るところとなります。また、あるパートからは突然、女性の写真を見せられ…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/