産業医の現場カルテ

30代女性「注射で失神経験」ワクチン接種時の注意点

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 産業医である私は先日、ある会社で総務を務める島田さん(仮名、30代女性)からオンラインで相談を受けました。「会社で新型コロナウイルスワクチンの職域接種があり、接種を受けるつもりですが不安があります」といいます。島田さんは過去に予防接種や採血の後に意識を失ったことがあるからでした。

一時的に意識を失うことも

 島田さんは以前、予防接種などで意識を失ったとき、医師から「重いアレルギー反応のアナフィラシキーではなく、血管迷走神経反射ではないか」と言われました。

 血管迷走神経反射は、疲労時や長時間立っていたり、痛みや緊張などで精神的なストレスを感じたりしたときに、血圧の低下や脈拍の減少が起こることで、一時的に意識を失うケースがあります。早い人は接種後、数分で症状が出ます。意識を失う前にふらふらしたり、吐き気や多量の発汗を伴ったりすることが多くあります。

 島田さんは「新型コロナワクチンのアレルギー反応や副反応も心配ですが、何よりまた接種後に意識を失うのではないかと心配です」と話します。過去の経験から、健康診断の採血も怖いと感じており、医療機関を受診することはなるべく避けているといいます。

急に倒れないよう対策を

 採血などで意識を失った経験がある人が、ワクチン接種に不安を感じるのは当然でしょう。私は、新型コロナワクチンのメリットとデメリットを説明した上で接種を促し、島田さんも接種を受けると決めました。その上で、接種を受ける際のアドバイスとして、次のように話しました。

 まず、接種の前日は、食事や水分をしっかり取り、十分な睡眠時間を確保して疲れがたまらないようにして、体調を整えます。

 接種の当日は、医師の問診の際に、これまでの経緯と医師から「血管迷走神経反射の可能性が高い」と言われたことを伝えます。接種後に設定されている15分の待機時間を延長できないか相談し、背もたれのあるイスか、可能であれば横になれるベッドを用意してもらいましょう。立っているときに意識を失って倒れて、頭などを強打しないようにするためです。

ベッドに横になってワクチン接種

 後日、接種を受けた島田さんから連絡があり…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。